【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン389】成熟化時代の開発リニューアル戦略2 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に開発リニューアル融資を得るコツについて紹介しよう。国内の旅館・ホテルマーケットも、成熟化の兆候が見え始めてきており、金融機関も新たな貸し出しに対して慎重になりつつある。しっかりと説明できるよう裏付けを持って融資申込みしたい。

 3、改善効果を具体的に計算する

 開発リニューアル投資を検討する場合には、改善効果を具体的に計算して事業計画に織り込もう。例えば、建て替えや増築を行う場合には、これまでの自館の稼働率や宿泊単価の実績に基づいて、マーケット相場や競合他館の実績を参考にしながら、稼働率や客単価の上昇幅を決める必要がある。

 「これだけ投資するのだから1人宿泊単価は3万円もらうべきである」と考えてはいけない。あくまで実績データや市場データなどの客観的な根拠に基づくものでないと金融機関に信用してもらえないだろう。

 4、守りの投資は攻めの投資と組み合わせる

 耐震補強や機械設備、電気設備の工事を予定している場合には、売り上げアップにつながるリニューアル投資と抱き合わせで融資申込みをした方が良い。これらの投資はいわゆる「守りの投資」と言われるものである。

 営業継続のためには欠かせないが、省エネ効果を除き売り上げや利益をアップさせる効果は極めて小さい。追加借り入れ分を既存のキャッシュフローで返済しなければならず、返済計画が成り立たないケースが多い。売り上げや利益のアップにつながる「攻めの投資」と組み合わせることで、返済計画が作りやすくなるだろう。

 5、地元の工事会社を金融機関に推薦してもらう

 プロジェクトマネジメントや意匠デザイン、設計については都市部の実績ある事務所に依頼するにしても、施工は地元の工事会社を巻き込んだ方が金融機関の印象は良い。工事入札の際に、金融機関からも業者を推薦してもらおう。

 金融機関にとって、取引している業者が工事の一部に関わることができれば、融資取引につなげることができる。多方面で取引上のメリットがあれば、開発リニューアル融資について協力してもらいやすくなるだろう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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