【観国之光 319】卒業旅行シーズン 冷え込むも需要開拓へ 本社論説委員 内井高弘


ホテルニューオータニは「写ルンです」がもらえる卒業旅行プランを発売(同社HPから)

 3月の卒業シーズンを控え、例年であれば「卒業旅行」の話題で盛り上がる時期だが、新型コロナウイルスの影響もあり、旅行を控える動きが目立つ。

 旅工房(東京都豊島区)が全国の10~20代の学生男女470人を対象にコロナ禍の卒業旅行についてアンケート調査したところ、「行く」と答えたのは9.4%で、「行かない」が57.0%、33.6%が「迷っている」と答えた。行かない理由として「コロナの感染が心配」が50.7%と半数を占めた。

 2日開催された政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」では、医療体制の負荷軽減のため、若者に卒業旅行や謝恩会は控えるよう呼び掛けた。尾身茂会長は「謝恩会とか卒業旅行とか、歓迎会あるいはもう少し暖かくなると花見に伴う宴会などもあって、このことはぜひ控えていただきたい」と述べ、協力を求めた。

 文部科学省が各都道府県や教育委員会などに対し、卒業旅行について、旅行先などの感染状況によって自粛の検討を促すことや、時と場所が分散される「分散型旅行」とし、なるベく混雑しない平日に行くことなどを推奨した、との一部報道もある。

 卒業旅行に行くのがはばかられるムードだが、先の調査では、コロナ終息後に改めて卒業旅行にリベンジしたいかどうかを聞いたところ、「したい」が64.7%、「しなくてもよい」が35.3%あり、卒業旅行の意欲の高さがうかがえる。

 観光業界もただ指をくわえているわけではない。卒業旅行市場が縮小しないよう、ニーズの掘り起こしに努める。

 JTBは、学生旅行商品「ガクタビ」のオンラインツアーを発売。18~25歳限定で、オンラインで楽しめる学生旅行を企画、提案している。お勧めはグループで貸し切りができるコースで、「カメラもマイクをオンにして参加者全員で旅行気分を味わえる」という。

 藤田観光は、学生向けに緊急事態宣言明けから利用できる「卒業旅行応援プラン」を発売。例えば、グランピング施設「藤乃煌(ふじのきらめき)富士御殿場」では独立型キャビンを生かしたアウトドア体験を提案する。「人との接触が少なく、感染リスクも軽減される」とし、1泊2食付き料金は1室2~3人利用で、1人2万6400円。

 ホテルニューオータニ東京では、レンズ付きフィルム「写ルンです」を人数分用意し、思い出を撮って記念に残す学生向け専用プランを3月末まで販売する。

 ワクチン接種も始まった。先行きはなお不透明だが、諦めることなく、前進したい。もう少しの我慢だ。


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