【観国之光 312】東京オリパラ 今後の訪日に影響も 本社論説委員 内井高弘


来年夏の東京オリパラは果たして開催されるのか。観光業の行方も左右しそうだ(国立競技場)

 新型コロナウイルスの感染が再拡大の兆しをみせる中、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が11月中旬、日本を訪れた。東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)が来年夏に延期決定後、初めての来日だ。

 余談だが、バッハ会長が着用した五輪マーク付きマスクがネット上でちょっとした話題に。医療従事者が使用する高機能の「N95マスク」とみられ、「(日本が)危険地帯と分かってるじゃん」など、ツッコミも入っていた。

 バッハ会長は菅義偉首相や小池百合子東京都知事らと相次いで面会。16日の首相との会談後には「観客を入れることに確信を持つことができた」と述べ、有観客での開催に自信を示した。しかし、実際に観客をどの程度入れるかの判断は時期尚早とし、明言しなかった。

 観客の応援は大会の盛り上がりに欠かせず、選手にとっても励みになる。観客もアスリートが持つ最高レベルの技術を間近で見ることでスポーツの魅力を再認識するだろう。ただ、一度に多くの外国人が来日し、会場周辺のみならず、日本各地を動き回ることを懸念する声は小さくない。

 先ごろ開催された体操の国際大会では、海外からの参加選手の行動管理を初めて実施。毎日検査を行い、行動範囲は試合会場や宿泊先だけに制限するなど、徹底したコロナ対策を講じた。

 政府は入国時の水際対策やスポーツイベント観客数の上限を徐々に緩和するなど、コロナ時代のイベント運営のノウハウ蓄積を進めているが、オリパラは桁違いの人数になる。大会を通じて感染が広がらないよう、無観客も含め多様な開催方式を想定し、柔軟な姿勢で準備を進めてほしい。

 東京オリパラが予定通り開催され、成功するかどうかは、日本の観光、特に訪日客がコロナ以前のような状態に戻るのかどうかを探るいい機会になる。

 日本商工会議所は先ごろ、コロナ禍を乗り越え、観光が前に進むための提言書を公表した。この中で、国際往来の促進とオリパラに向けた感染症防止対策の徹底について触れ、(1)訪日客の入国検査の拡充(2)検査等証明書の世界標準化に向けた検討(3)実施方法の検証―などを求めた。

 また、JNTOの外国人向け日本情報提供アプリ「Safety tips」で、日本の衛生習慣、生活常識を含む感染症対策についての項目を追加し「渡航前からの認知、理解を促す広報を強化する」とした。

 バッハ会長の来日で開催に大きく一歩を踏みだしたという意見もあるが、感染やワクチン開発の状況を見極め、慎重な判断をしてほしいものだ。

来年夏の東京オリパラは果たして開催されるのか。観光業の行方も左右しそうだ(国立競技場)

 
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