【観国之光 305】秋冬誘客キャンペーン コロナ禍でも実施相次ぐ 本社論説委員 内井高弘


9月4連休は観光地もにぎわった(和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド)

 新型コロナウイルス禍には負けていられない、とばかり、秋冬に誘客キャンペーンを検討、実施する自治体が増えつつある。けん引役である観光業を支援、多くの観光客に来てもらって疲弊する地域経済に活を入れたい、という切実な思いがあるのだろう。

 最近話題になっている動画がある。「別府温泉おもてなし再開」という秋冬の別府観光をPRする動画で、大分県別府市が9月下旬から公開している。コロナ禍の収束が見通せない状況下にあって「まだ『来ちょくれ』と言えないが、『待っちょんで』とは言わせてほしい」という思いを伝えている。

 杉乃井ホテルや城島高原パーク、別府ラクテンチなど市内のほか、周辺のうみたまごやハーモニーランドといった12の観光施設のスタッフ、そして長野恭紘市長がそろって出演する、16種類、合わせて8分16秒の作品だ。市は「本業のおもてなしがしたくてうずうずしている気持ちをアピールしたかった」という。

 国指定名勝「海地獄」をバックに、宿泊施設の女将3人が3密にかけて、3種の蜜がかかった「別府3蜜だんご」のPRには思わずニヤリとしてしまう。

 事業費は3200万円とか。市長は「ライバルの観光施設がピンチをチャンスに変えようと協力した」と、地域一丸となって作ったことをアピールしている。

 札幌でも9月1日から12月末まで、市内の宿泊客を対象に、宿泊補助券などが当たる「また来てさっぽろ なまら当たるキャンペーン」を実施する。再度札幌を訪れてもらうのが狙いで、抽選で2万人に、宿泊した施設にもう一度泊まる際に使える1万円相当の宿泊補助券が当たる。

 県外から多くの人が来て感染者が増えることを警戒する気持ちは分からないではない。お叱りを受けそうだが、どんなに気をつけていても感染する時は感染する。過敏に反応することなく、手洗いや消毒、マスク着用などを心掛けるしかないのではないか。

 旅先の旅館・ホテルでも感染防止対策は徹底されている。怖がることなく、観光してほしいものだ。

 秋冬は季節性インフルエンザと同時流行する可能性があるとされる。どう備えていくのか、政府の対応を期待したい。

 全国知事会は9月26日に開いたオンライン会議で緊急提言をまとめた。提言では緊急包括支援金を活用した検査体制の整備、入院医療機関や宿泊療養施設の運営体制の確保に向けた支援のほか、「Go Toキャンペーン」の延長なども求めた。10月から東京が加わり、Go Toも新たな段階に入る。観光による景気回復を切に願う。

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