【観国之光 303】自民党総裁選 どうなる観光政策 本社論説委員 内井高弘


自民党総裁が有力視されている菅官房長官。観光振興に強い意欲を示している(1月に東京都内で開かれた観光立国新春交流会で)

 ポスト安倍を選ぶ自民党総裁選は8日告示され、菅義偉官房長官(71)、石破茂元幹事長(63)、岸田文雄政調会長(63)の3氏による争いとなった。

 安倍政権の評価はさまざまだが、こと観光に限ると、それまでの政権に比べ政策として取り上げる機会も多く、観光の重要性を広く知らしめたのではないかと思う。誰が総裁(総理)になるにしろ、観光立国の歩みは止めてほしくはない(中身は再検討すべきかもしれない)。

 本命視されているのが菅氏で、党7派閥のうち5派閥の支持を固め、圧倒的優位に立っているためか、マスコミ論調も菅氏勝利の流れで、多くの国民も次期総裁として受け止めている。

 それはさておき、3氏は総裁選に向けた政策を発表している。それぞれのスローガンは菅氏が「自助・共助・公助、そして絆」、石破氏は「納得と共感」、岸田氏は「分断から協調へ」だ。

 3氏の政策を見ると、「観光」に言及しているのは菅氏で、「雇用を確保 暮らしを守る」「活力ある地方を創る」という中で触れている。

 「Go Toキャンペーンをはじめ、感染対策をしっかり講じることを前提に、観光など新型コロナによってダメージを受けた多くの業種を支援」「農業改革や観光をはじめ、がんばる地方を政治主導でサポートする」と主張する。

 また、自身の功績について「官房長官としては、外国人観光客を約4倍の年間3200万人、消費額年間5兆円まで拡大」などと強調している。

 官房長官時代、観光政策で法務省などの反対を抑え込み、外国人のビザ緩和を決断、インバウンド拡大の道筋をつけたのは高く評価されている。

 菅氏は観光業界の集まりにも顔を出し、政府として観光振興に力を入れていることを再三表明してきた。

 1月21日、東京都内で開かれた「観光立国新春交流会」に出席した際、「昨年(19年)のインバウンドは韓国以外全て10%以上伸びている。自信をもって、皆さんと協力し、4千万人、6千万人達成に向け頑張る」と誓った。

 その後、コロナ禍でインバウンドが激減するとは思わなかっただろうが、観光に対する思い入れの強さがうかがえる。

 観光立国の立役者、二階俊博幹事長が菅氏をいち早く総裁候補として支持を表明した。仮に菅総裁が誕生すれば、二階―菅ラインで日本の観光政策はさらに重みを増すことが期待される。

 コロナ禍で政権運営は難しいかじ取りを迫られるが、新政権の観光政策を注視したい。14日の投開票で新総裁は決まる。


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