
インバウンドの回復には時間がかかりそうだが、国内外を問わず、交流の動きを止めてはいけない(写真と本文は関係ありません)
新型コロナウイルスに苦しむ観光業界などが期待を寄せた「Go Toキャンペーン事業」の実施が遅れそうだ。
事業は7月下旬にもスタートする予定だったが、運営事務の委託費が高すぎるという批判を受け、政府が委託先を決める公募の手続きをいったん中止、「トラベル」など分野ごとに公募し直すことを決めたためだ。
事業は1次補正予算に事業費として約1兆7千億円が盛り込まれた。コロナ禍が深刻だった4月の出来事だったこともあり、「急いで行う必要があるのか」など、野党を中心に厳しい声が出た。
加えて、予算の2割近い最大3095億円が事務委託費に充てられることが判明、「高すぎる」との批判が噴出した。確かに「その分、本来の目的である事業者への支援が減ることにならないか」と思ったものだ。コロナ禍に苦しむ事業者や個人への早急な支援が求められている。政府は批判に真摯(しんし)に向き合い、透明性を高めた適正な運営をすべきだ。
一方で、事業自体が否定され、観光・旅行を促す機会がなくなることはあってはならない。
トラベラーズ・ジャパンが会員を対象に実施した「Go To Travelキャンペーン」に関する意識調査によると、事業内容を説明した上でその利用意向を尋ねたところ、「利用したい」という回答が87.5%に上った。7~12月に複数回の国内旅行を78.6%が「検討する」と答えたことも分かった。
「外出自粛など、コロナ禍で発生したさまざまなストレスを観光・旅行で発散したいという(国民の)思いに応えたい」と考える観光事業者は多いと信じる。
コロナ禍の終息が見通せない中にあって、観光客の受け入れに踏み切る国・地域も出てきている。観光が経済の屋台骨と捉えているためだ。とりわけ、欧州では夏の観光シーズンを控えており、再開を待ち望む声は多いという。
日経新聞によると、フランスでは、政府系投資銀行BPIフランスによる観光業向けの融資枠を現行の2億5千ユーロから10億ユーロに大幅に拡大する。失業者への給与補填(ほてん)も観光業界は特別に9月まで100%補助を続けるという。手厚い政策だが、それだけ観光業がフランス経済を下支えしていると認識しているからだ。
日本では観光・旅行に対する認識はいまだ高いとは言えない。しかし、自然災害などで大きな被害を受けた地域の復旧・復興に観光・旅行が大きな力となったことは間違いないと自負する。世界の国・地域が観光支援を急いでいることがその証でもある。業界は自信と誇りをもって観光振興に努めよう。
インバウンドの回復には時間がかかりそうだが、国内外を問わず、交流の動きを止めてはいけない(写真と本文は関係ありません)