【観国之光 293】県民対象キャンペーン 地元の良さ知る機会に 本社論説委員 内井高弘


県民対象の旅行キャンペーンは地元の良さを知るきっかけになる(写真と本文は関係ありません)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため出されていた政府の緊急事態宣言が5月25日に全面解除され、徐々ににぎわいが戻りつつある。一部地域を除き、感染再拡大の兆候は見られていないため、第2波を警戒しながらも、経済活動との両立を模索する動きが出てきている。

 人の移動はいまだ制約されている。政府の基本的対処方針は観光振興について、「まずは県内観光の振興から取り組むこととし(6月18日までを想定)、その状況を踏まえつつ、県外からの人の呼び込みを実施すること(6月19日以降の段階からを想定)」と目安を示している。

 コロナ禍で落ち込んだ観光需要を回復させようと、多くの県や市町村などが地元民を対象とした誘客キャンペーンに力を入れている。

 福島県では、県内の旅館・ホテルに泊まった県民に対し、1泊当たり5千円を補助する事業を6月から始めた。地元紙によると、オンライン予約と店頭販売で扱い、第1弾の宿泊分は早々と埋まった。予想以上の反響で、問い合わせ先の県観光物産交流協会には電話が殺到したという。

 外出自粛に飽き飽きしていたのだろう。宣言解除を機に、「気分転換しよう」という気持ちは理解できる。受け入れ側も感染予防対策に細心の注意を払い、万全を期してほしい。

 群馬県は「愛郷ぐんまプロジェクト 泊まって!応援キャンペーン」を実施。県民を対象に、旅館・ホテルの宿泊費が1人当たり1泊6千円(税別)以上なら5千円を割り引くという何とも大胆な施策だ。利用期間は6月5日宿泊分から7月末までの宿泊分で、先着30万人としている。

 5千円のうち4千円は県が、千円は宿泊施設が負担するという。負担が重荷なのか、キャンペーンへの参加を見合わせる施設もあるようだが。

 「地元の観光地や温泉地にはいつでも行ける」として、県外や海外に目を向ける人は少なくない。これらキャンペーンは地元に目を向けさせ、良さを知ってもらう良い機会になる。県や市町村、そして観光関係者は足並みをそろえ、地元民を満足させるプランを作ってほしい。外国人の訪日観光は当面期待できない。日本人の国内観光に活路を見いだすしかない。

 これから夏の旅行シーズンに突入する。例年のような人出は望むべくもないが、そんな中で観光業界が期待を寄せていたのが「Go Toトラベルキャンペーン」だ。が、高額な事務委託費に批判が集まり、当初予定していた7月開始が遅れそうな雲行きになってきた。残念というしかない。観光・旅行そのものが否定されないことを願うばかりだ。

県民対象の旅行キャンペーンは地元の良さを知るきっかけになる(写真と本文は関係ありません)

 
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