【観国之光 281】大震災から9年 沿岸3県は復興途上 本社論説委員 内井高弘


宮城県南三陸町では震災復興祈念公園の整備が進められている。職員など43人が犠牲となった旧防災対策庁舎(左)も近くから見られるようになった(2月下旬撮影)

 東日本大震災から11日で9年となった。犠牲者の冥福を祈ると共に、震災の記憶と観光復興の取り組みを後世に伝えていく役目を微力ながら果たしていければと思う。

 被災した地域では新しい観光施設や復興住宅ができ、復興が着実に進んでいることがうかがえる。一方で、東北沿岸には高い防潮堤が建設され、景色は大きく変わっている。生まれ育った町の変化になじめない人や、近所付き合いがなくなったことで寂しさを感じている人もいるだろう。

 復興庁によると、震災による避難者は2月10日現在で4万8千人に上り、全国47都道府県、975の市区町村に所在している。そうした中、政府は4日、原発事故で福島県双葉町の全域に出ている避難指示を、駅周辺の帰還困難区域など一部で解除した。事故以来9年ぶりに人の出入りが自由になり、復興が一歩前進したといえそうだ。

 明るい話題といえば、不通が続いていたJR常磐線が14日、全線で運転再開されることだろう。人の行き来する姿が戻ることで少しでも地域に活気が出れば何よりだ。

 前述のように、新たな観光施設もできている。宮城県気仙沼市・大島の浦の浜地区では8日、「気仙沼大島ウェルカム・ターミナル」が完成、オープンした。観光客の新たなくつろぎの場としての役割を担うことが期待されている。

 津波による壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市。昨年9月に「東日本大震災津波伝承館」と「道の駅高田松原」が開館した。今夏には双葉町に「東日本大震災・原子力災害伝承館」もオープンする予定だ。

 復興の歩みを実感させるのが東北を訪れる外国人観光客の多さだ。19年の東北6県の外国人延べ宿泊者数は155万7910人泊(前年比21%増)となり、政府目標を1年前倒しで達成した。

 いま観光業は新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けている。残念としかいいようがないが、終息後に備え、どう挽回していくか、知恵を絞ってほしい。

 政府主催の「東日本大震災九周年追悼式」は中止になった。当日は、首相官邸で安倍晋三首相が関係閣僚らと共に震災が発生した時間に合わせて犠牲者に黙とうし、追悼のことばを述べる。東北のことを思うきっかけとして追悼式は実施してほしかったが、やむを得ない措置だろう。

 いずれにしろ、被害の大きかった岩手、宮城、福島の沿岸自治体の復興はいまだ途上にある。その認識を政治や行政、そして震災の記憶が薄れかけている人々と共有したい。もちろん、観光関係者も。 

宮城県南三陸町では震災復興祈念公園の整備が進められている。職員など43人が犠牲となった旧防災対策庁舎(左)も近くから見られるようになった(2月下旬撮影)

 
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