夏季五輪、サッカーワールドカップ(W杯)と併せ、世界の3大スポーツ大会と呼ばれるラグビーW杯。その熱戦が9月から11月まで、日本の12都市(札幌、釜石、熊谷、東京、横浜、静岡、豊田、東大阪、神戸、福岡、熊本、大分)で繰り広げられる。
開幕が近づくにつれムードも盛り上がっているようで、チケット収入は3月時点で290億円が見込まれており、02年のサッカーW杯日韓大会の入場料収入約250億円を上回っているという。
日本戦や、優勝候補といわれるニュージーランドが登場する試合などは人気で、チケットの入手も難しいようだ。
ラグビーW杯はこれまで、ラグビー文化が根付いている欧州や南半球など伝統国・地域で開かれていただけに、日本での開催は特異な出来事といえる。公式キャッチコピーの「4年に一度ではない。一生に一度だ」という言葉もあながち誇張でない。
ラグビーW杯の特徴の一つは、開催期間が44日間(9月20日~11月2日)と長いことだ。試合の合間も長いことから、海外からの観戦者の滞在日数も長くなりがちで、平均滞在日数は2週間に及ぶともいわれる。
日本政府観光局(JNTO)は「試合を目的にしたファンは必然的に地方を訪れることになり、地方の認知度を向上させる千載一遇の好機」と指摘する。W杯組織委員会はW杯を目的にした訪日客を40万人と見込んでおり、これだけの人が動けば落ちるお金の額も大きい。
ましてや海外のラグビーファンは他競技と比べ富裕層が多いとされる。経済波及効果も膨らみそうだ。
全48試合のうち7試合が開催される横浜市。日銀横浜支店は市内経済への波及効果は少なくとも約100億円に上ると試算する。パブリックビューイング会場での観光客の支出、関連グッズの販売などは盛り込んでいないため、経済効果はさらに大きくなりそうだ。
12都市では受け入れ態勢づくりも着々と進んでいる。サモアとロシアの公認キャンプ地となっている兵庫県淡路市では、市内各所に看板などを設置、歓迎ムードを高めるとともに、市民への周知も。宿泊先などは組織委の依頼で非公開となっているのが残念だ。
また、ラグビーの聖地、花園ラグビー場がある東大阪市は、今年を「観光元年」と位置付けて、訪日客の受け入れ態勢を整えていく。
12都市はともかく、それ以外の地域ではまだまだ関心が高いとはいえない。盛り上がりをどう日本全体に広げていくかが課題でもある。来年の東京五輪・パラリンピックの成功に向け、ラグビーW杯は大きな鍵を握っている。
全国12都市で開催されるラグビーW杯。地方を訪れる訪日客も増えそうだ(W杯のチラシ)