【観光立国・その夢と現実 7】観光大学校の夢 小原健史

  • 2020年10月18日

 世の中、俗に「十年一昔」と言うが、その3倍もの昔の時代に私は全旅連青年部長になった。

 〔地方の時代〕が声高に叫ばれる中で「全国47都道府県の全ての訪問」を掲げながら、私はスローガンとして継続事業の「料飲税撤廃運動の展開」、新たな「観光大学校の実現」「旅館は地域の文化館、歴史館との意識の醸成」などを掲げた。

 ここまで記載するとせんえつながら私の旅館業界の活動を知る人は、小原青年部長は何よりも「料飲税撤廃運動に即、突入した!」のではないか?との印象を持たれると思うが、事実は大きく違う。

 当時の私が優先したのは「観光大学校の創設」であった。旅館業界でも政権交代の際には誰もが自分なりの“新味”を出したいものである。

 当時、私は地元の九州山口経済団体連合会、いわゆる「九経連」の観光委員会の委員を務めており、青くさい生意気な意見を九州の財界の大立者の方々の前で述べていた。いわく、「九州は観光アイランドと言うけれど、観光産業の人材を育成する機関が全くない。日本では立教大学にしか観光学科はない。九州に観光大学を造るべきだ!」と。

 会議のたびに何度も言うので、当時の西日本鉄道のトップで、福岡経済界のドンのお1人でもあられた大屋会長が「小原君、君はいつも観光大学のことを言うが、どうしたら良いのだ?」と聞かれた。

 私は思いの丈を、ここぞ!とばかりにぶつけた。その結果、西鉄と福岡銀行の1千万円ずつの寄付講座で九州産業大学の中に「観光コース」が誕生した。

 〔やればできる!言い続ければできる!〕と、このとき、私には強烈な信念が生まれた。そして、〔無から有を生み出す醍醐味(だいごみ)を知った。すさまじく楽しかった〕。

 九産大では大分大学の交通学の田原教授を迎え、私も一緒にカリキュラムを考え、講師になり、まさに手作りの観光学科の創成期であった。

 その経験から、青年部長として当時の運輸省に、「観光大学校の開設」の企画書を持ち込み、鋭意努力した。

 当時の荒井観光部長(現在の奈良県知事)と東京、下呂温泉、嬉野温泉で合宿をしながら策を練った。

 結果は、予算上の問題で運輸省立の観光大学校は実現できなかったが、全旅連青年部では「観光大学校設立委員会」を組織し、伊香保温泉の大森委員長を中心にさまざまな研究が進んだ。

 平成・令和の今こそ、全国各地に観光産業や旅館ホテル業、旅行業について学ぶ大学や専門学校が存在し、学問的な見地からの学習、また、実務的な研修ができる機関が増えたが、夢のようなことであると感じる。このことは業界の進歩であり成熟と言っても過言ではないであろう。 

 その後、長い間にわたって宿泊業や観光産業の人材育成を体験に基づくノウハウや情報を教育の資料として整え、さまざまな場所で特に若い人々に教えてきた。それは、九州産業大学、久留米大学、APUアジア太平洋大学、和歌山大学、長崎県立大学、台湾の呉鳳科技大、南台科技大、JR九州民営化の際の門司研修所などなどで、現在は佐賀市の西九州大学で教鞭(きょうべん)をとっている。

 また、わが嬉野温泉・和多屋別荘でも、「小原学校」として毎月開催していた。

 そこで行うのは、〔旅館ホテルの経営の目標としての顧客の感動と利益の追求〕〔施設・料飲・人的サービスの三大商品〕〔旅館ホテルの地域性と経済波及効果〕〔旅館ホテルの法的な位置づけ〕などである。

 人材教育は終わりのない観光産業の底支えである。

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

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