【観光業界人インタビュー】観光庁 田端浩長官

  • 2018年9月3日

田端浩長官

新税活用などで施策推進 訪日消費8兆円の達成へ

 観光庁の田端浩長官は8月22日、就任(7月31日付)後初めての専門紙向け記者会見で、「観光先進国」の実現に向けた施策の推進などに意欲を示した。会見の主な内容は次の通り。

◇   ◇

 ――就任の抱負は。

 田端「明日の日本を支える観光ビジョン」(政府の中長期的な観光振興構想、2016年3月決定)に掲げた目標を確実に達成することが重要だ。創設された国際観光旅客税を活用した高次元の観光施策を一気呵成(かせい)に進める。観光先進国の実現に向けて、積極的な観光行政を推進したい。

 観光先進国の実現には、多くの国々との相互の交流が極めて重要だ。相互理解を深めることが結果的にはインバウンドにも大きな効果がある。2国間の観光交流を積極的に進めていく。

 日本人の国内旅行では、山口県の元乃隅稲成神社のように、訪日外国人旅行者の評判の高まりで、新たな観光資源となるようなことが各地で起きている。インバウンド施策は、国内旅行の活性化にもつながる施策だという認識を産業界には広く持ってもらいたい。産業界、地域とともに国内旅行の充実、地域の活性化に努めていく。

 観光行政のレベルアップにもしっかりと取り組む。国土交通行政に関わってきた経験を生かして、関係省庁・部局、産業界、関係者と緊密に連携し、観光行政の効果を上げていく。

 観光庁の体制も300人を超えた。組織として大きくなったので、きっちり運営しないとならない。情報や認識を共有し、仕事がうまく回る運 営、生産性が上がる仕事の仕方にする。風通しの良い職場を目指す。

 ――「明日の日本を支える観光ビジョン」などに掲げている政府の目標、2020年に訪日外国人旅行者数4千万人、その消費額8兆円の達成に向けて特に重視する施策は。

 田端 2017年の訪日外国人旅行者数は2869万人、その旅行消費額は4・4兆円だった。人数はこの5年間でプラス約2千万人と大きく伸びた。ただ、目標の達成は道半ばで施策の一層の推進が不可欠。特に消費額の目標達成には、滞在を長くし、飲食や物産の消費につなげる必要がある。地方創生、地域活性化において、地方での消費が課題なのでしっかり取り組む。そのためにモノ消費からコト消費へ、いろいろな体験ができるようにする。

 ――日本人の国内旅行、海外旅行の現状や活性化策は。

 田端 日本人の国内旅行は、少子化などの中で伸びづらいところだが、ここ数年は旅行者数、消費額は堅調。日本人の国内旅行消費額は、国内の旅行消費額全体(海外旅行、訪日旅行含む)の約8割を占めるので非常に重要だ。アウトバウンドは17年の出国日本人数が1789万人だったが、目標には2千万人を掲げている。日本人は国内旅行、海外旅行にもう少し出掛けてほしい。いろいろなデスティネーションを訪れて実体験し、関心を持つことが重要。グローバルな社会の中で内向きではいけない。

 観光地域づくりでは、日本版DMOの形成を推進している。地域間で取り組みに差はあるが、地域ごとに最も実の上がる手法で進めていけるよう力を入れる。また、休暇取得の促進については、政府全体で働き方改革に取り組んでいるが、観光庁としての取り組み方をもう一度考えてみたい。

 ――宿泊業や旅行業などが国の基幹産業へと成長するための課題は。

 田端 観光産業は全般として人手がかかるサービス産業なので、産業としての生産性をどう向上させるかが重要だ。生産性向上は人材確保にもつながる。利益を出し、給与処遇が対応するようにしないと、人はなかなか集まらない。観光産業だけでなく、中小企業などの生産性向上に政府を挙げて取り組んでいるところなので、この流れに乗ってほしい。タイミングを逃して従来のままだとチャンスを逸してしまう。産業界も意識を持って取り組み方を考えてほしい。旅館業などは経営が厳しいところもあるが、しっかりとやれると思う。観光庁としても施策を推進していく。

 ――観光庁は10月に発足10周年を迎える。

 田端 10年前と比べても、観光は国の成長戦略の柱としてさらに重要になっている。現政権も地方創生の切り札としての認識を強く持っている。観光行政が重要になる中で、関わる省庁・部局が増えた。観光庁は、関係する省庁・部局と調整してさまざまな課題を解決し、結果を出すというコーディネートの役割が大きくなっている。この部分を10年の節目にレベルアップしたい。


田端 浩氏(たばた・ひろし)東大法学部卒。1981年4月、運輸省(現・国土交通省)入り。2002年4月、国交省総合政策局観光部旅行振興課長。09年7月、観光庁観光地域振興部長。国交省鉄道局次長、自動車局長、大臣官房長、国土交通審議官を経て、18年7月31日から現職。愛知県出身。61歳。

【向野悟】

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