1年で一番昼が短く、夜が長い日、冬至にカボチャを食べると良いと言われるが、夏に収穫の最盛期を迎えるカボチャを冬至に食べるのはなぜなのか?
理由の一つが「運盛り」。古くから、太陽の力が最も弱くなる冬至を境に、再びその力が蘇り、陰から陽に戻ると考えられて来たため、「一陽来復」とも言われる。その機に乗じて運気を上昇させようと、運イコール「ん」の付く物を食べるのが「運盛り」という習慣だ。中でも「ん」が二つ付く、南瓜(なんきん)、蓮根、人参、銀杏、金柑、寒天、饂飩(うんどん=うどん)を冬至の七種(ななくさ)と呼ぶ。南瓜、つまりカボチャはその代表格なのだ。
もう一つの理由は、追熟。夏収穫したばかりのカボチャは水っぽいが、しばらく保存すると水分が抜け、デンプンが糖に変わって甘くなるという。寒くなってから食べる方がうまいのだ。冷蔵庫のない時代、長期保存が可能なカボチャは、冬の栄養補給にはもってこいだったのだろう。身体の免疫力を高めるβ―カロテンが豊富なので、風邪の予防にも良いそうだ。
さてこのカボチャ、非常に種類が多い。栗カボチャやえびすカボチャといった名前で流通している西洋カボチャ系と、宮崎県産日向かぼちゃや能登野菜の小菊かぼちゃなど日本カボチャ系、そして茹でると果肉がそうめん状にほぐれる金糸瓜やズッキーニなどのぺポカボチャ系の三つに大別できるという。日本カボチャは、味わいは淡泊で甘さも控えめだが、粘質で煮崩れしにくいため煮物に適している。近年人気が高いのは西洋カボチャで、甘味が強くほっこりした食感が特徴だ。
最も生産量が多く、全国のおよそ5割近くを占めるという北海道で、超美味なカボチャに出会った。親しくさせていただいている、札幌場外市場「藤本青果」の藤本博生会長おススメのそれは、「大浜みやこ」。札幌に程近い手稲山口地区の特産品である。昼夜の寒暖差が大きく水はけの良い砂地が、ホクホク感と高い糖度をもたらした。さらに、全生産者による共撰出荷で、質の良い物だけがこの名を名乗れるため、ブランド力はどんどん高まり、今年7月の初セリでは、御祝儀相場とはいえ、5玉で5万円もの高値を付けた。
もう一つ特筆すべきは、「ロロン」というカボチャ。この品種のおいしさをたくさんの人に伝えたいという、種苗会社の開発者の「ロマン」と、栗のような食味という意味の「マロン」がその名の由来。甘味が強く極粉質で、ラグビーボールのような形と相まって、一度食べたら忘れられない。米作りが本業の、福島県西白河郡中島村の野木冨士男さんが作って下さったのだが、天ぷらにしたらあまりの甘さにビックリ!
カボチャスープは、冷製でも温かくてもイケる。煮物もいいけど、マヨネーズで和えたカボチャサラダもおいしいしなぁ…。次の冬至は、どうやってカボチャを食べようか? 新たな年の運気アップを願いつつ、長い夜を楽しみたい。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
ロロン