【私の視点 観光羅針盤 242】「地域のしあわせ」を考える企業 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三

  • 2020年6月8日

 政府は5月25日に新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)拡大に伴って発令していた緊急事態宣言を全面的に解除した。とはいえ、この間の「ステイホーム」によって、社会的・経済的活動が大きく制約され、さまざまな産業分野で休業や経営不振、倒産などが生じており、深刻な事態に至っている。特に深刻なのは雇用問題だ。政府が緊急事態宣言を発令した4月から休業で失職する人が急増し、1日に千人を超える事態になった。5月末で派遣社員が大量に雇い止めされる懸念も強まっている。2008年のリーマン・ショックの際にも派遣労働者が大量に雇い止めされ、社会問題になった。

 今回のコロナショックに伴う解雇問題はより大きな影響を内包している。既に非正規労働者は全体の4割に上っており、政府や自治体は企業支援だけでなく、解雇された人々に対する失業対策や生活保護対策を講じる必要がある。

 日本の雇用の中心は既にグローバルな大企業からローカルな中堅・中小企業に移っており、それらの企業がコロナ後の日本の各地域で中核を担っていかねばならない。北海道でもローカルな中堅・中小企業が既に重要な役割を果たしつつある。

 北海道土産の定番の一つ「白い恋人」を生み出している石屋製菓株式会社を私は高く評価している。石屋製菓は1947年創業の会社であるが、2007年に「白い恋人」賞味期限改ざん問題が発生して経営不振に陥り、北洋銀行などの支援で立て直しを図り、13年に創業家3代目の石水創氏が31歳の若さで社長に就任し、有能な経営手腕を発揮して、今日に至っている。

 「しあわせをつくるお菓子」を経営理念にして、「お客さまのしあわせ」「社員のしあわせ」「地域のしあわせ」を生み出す会社経営を行っている。

 石屋製菓は5月末に「道内農業法人への社員派遣による研修を通じた農業支援」事業を公表。道内農業はコロナ禍で外国人技能実習生の受け入れが困難になり、深刻な人手不足に陥っている。

 一方、石屋製菓では工場や施設休業を余儀なくされており、業務を行えない時間を社員教育に生かし、原材料供給元である農業や酪農業の実情を学ぶことで、生産者の立場に立った視点を身につけ、食品ロスの削減や環境保全活動の大切さを体感し、SDGs推進を醸成する意図がある。研修期間は6~11月まで。入社3年目までの30歳未満の社員約130人が対象、5グループに分けて1カ月交代で、札幌市、江別市、北見市、士別市などの農業法人に派遣予定。

 石屋製菓は「100年先も、北海道に愛される会社へ」という長期ビジョンの達成に向けて、北海道への貢献を目指しており、ISHIYA財団を通しての奨学金事業なども行っている。昨年には10億円を投じて投資ファンド「ISHIYAクリエイティブス」を設立し、後継者問題で事業承継に苦慮する企業の支援なども行っている。

 政府や自治体による公的支援も重要であるが、「地域のしあわせ」を考えるローカル企業の存在も不可欠である。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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