【私の視点 観光羅針盤 236】新しい生き方の模索 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三

  • 2020年4月20日

 安倍晋三首相は4月7日に新型コロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」を初めて発令した。対象地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、期間は5月6日まで。首相は生活維持に必要な場合を除く外出を自粛し、人との接触を7、8割減らすように呼びかけた。

 7都府県の知事は私権制限を含む法的措置が可能になり、すでに外出自粛やイベント自粛の要請、学校や映画館などの使用停止などがなされている。

 一方、政府は緊急経済対策の骨子を公表し、民間支出を含めた事業規模は過去最大の108兆2千億円を投入し、日本経済の下支えを行う予定。2008年のリーマン・ショック後の経済対策の規模は56兆8千億円だったので、コロナ・ショックはほぼ倍の規模になる。

 米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻は08年9月15日で、その後に極めて深刻な金融危機が全世界を襲った。米国型金融資本主義によってグローバル・マネーが全世界を無軌道に暴走し、グローバル経済に深刻な打撃を与えた。リーマン・ショックによって米国型マネー資本主義の害悪が暴かれ、各国で反対デモが繰り返された。

 米国ではリーマン・ショック以後に、それまでのマネーが「パワーの源泉」「生活の根幹」という生き方に反旗を翻して、マネーに換算できない価値を大切にする生き方が静かに浸透していった。

 米国ではそのような生き方は「New Normal」と名付けられ、マネーによらない新しいライフスタイルの模索が行われた。過去の豊かさや便利さから決別し、必要以上のぜいたくや無駄を省いて、それぞれ分相応の生き方を心掛けることがニューノーマルである。

 日本でもリーマン・ショックは大きなインパクトを与えたが、それ以上に11年3月11日に発生した東日本大震災が日本人の生き方に大きな影響を与えた。リーマン・ショック以後の米国と同様に日本でも震災前の状態には戻れないことを前提に、所得の範囲内で堅実に生き、商品を賢く選択し、他者との絆や分かち合いを重んじて、家族や地域の人々と共に消費し、幸福感を求める生き方に対する関心が高まった。

 今回のコロナ・ショックは当初、深刻な健康危機を生み出したが、その後に外出自粛やイベント自粛などによって大規模な経済危機をもたらしており、企業倒産や従業者解雇などによる生活破綻が生み出されている。

 世界中でリーマン・ショック以上の大きな負のインパクトが生じているので、おのずと人々の生き方そのものに強い影響を与えることになる。

 コロナ・ショックはやがて終息するはずであるが、人々の生き方そのものに影響を与えるので、観光業界は今からポスト・コロナショックにおける日本観光の未来を想定してなすべきことを早めになしていく必要がある。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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