2019年の1人当たりの消費金額が一番多い国はどこかご存じだろうか。フランスである。7~9月期の集計で1人当たり25万円使ってくれており、非常にありがたい市場だといえるだろう。18年で約30万人訪日してくれており、今年もこのペースでいけば35万人ほどになるだろう。他の欧米豪諸国と同じように、2週間程度は日本に滞在してくれている中で、地方への興味や関心が高いのも特徴といえる。
東京や京都はマストで訪れる場所であり、大阪、金沢、高山、宮島、高野山、直島といったところや、最近では島根や佐渡島といったところも訪れているという。
欧米豪諸国の中でも、ありのままのオーセンティックな(ホンモノの)日本を求めているのが特徴だ。人で混雑した場所を嫌う傾向も強く、日本人が大事にしてきた価値観にひっそりと触れ合い、そして感じて交流したいという需要が高い。
彼らの視点では箱根は作られた観光地と感じるようで、人気の高野山ですら最近はフランス人が多すぎるので、別の場所を求めるような人も多いという。最近、地方ではフランス人が少しずつ増え始めたという話を聞くことが増えてきたが、こうした背景が要因のようだ。
さて、宮島というキーワードが出てきたが、広島市内より宮島に浮かぶ厳島神社の大鳥居こそ、ぜひ見たい場所になっているという。JNTOパリ事務所や各種旅行博において、日本のイメージの代表格として宮島の鳥居の画像が使われており、その浸透効果も大きいだろう。
18年に広島県にはフランス人が15.9万人訪れている。訪日観光客総数275.2万人に対して、フランス人の数は15.9万人と5.8%のシェアで考えると非常に貢献しており、広島県の訪日数の欧米豪比率50%以上の実績の一要因でもある。
この宮島がある廿日市市とモン・サン=ミッシェルがあるモン・サン=ミッシェル市は水辺に浮かぶ潮の干満が魅力的な歴史的宗教世界遺産ということで、双方がこの特徴を認め合って観光友好都市になっている。19年は締結10周年で、市長や議員の交流も盛んになり、モン・サン=ミッシェルの砂浜に鳥居が置かれるような企画もされたようだ。
この宮島において、フランス人は単純に大鳥居の写真を撮って終わりではなく、大聖院を訪れたり、弥山に登ったりと自然や佇まいそのものを感じる滞在をしてくれている。その需要にこたえるちょっとした仕掛けをもっと加速することができれば、よりファンになってくれる潜在性も多分にある。
フランス人に価値を伝えるにおいても、特に若い世代は英語であれば大きな問題はないともいわれており、言語のハードルも下がっている。
日本人にとっては当たり前のものが、「オーセンティック」というキーワードで表現され、価値に置き換えられる時代である。地域資源を見直し、持続的に遺していくためにどうあればよいか、これを機に先に手を打てた地域が生き残っていけるだろう。
(地域ブランディング研究所代表取締役)