新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて、2020年度中間決算で大幅な赤字に陥った大手旅行会社が構造改革を進めている。
KNT―CTホールディングスは7月13日、中間決算を発表するとともに、「激変する事業環境に対処し、持続的な成長を果たすため」の事業構造改革の実施を明らかにした。22年4月をめどに近畿日本ツーリスト地域会社各社を合併し、グループ全体で現在約7千人の従業員を24年度末までに約3分の2に縮小。個人旅行店舗は138店舗を22年3月末までに約3分の1に縮小する。
1週間後の20日、JTBも中間決算と併せて、経費抑制により利益回復を目指す構造改革の概要を発表。21年度までに国内グループ会社10社以上、海外グループ会社190拠点以上、国内店舗115店をそれぞれ削減し、本社機能はスリム化。グループ要員は2万9千人から6500人を削減する計画だ。
販売施策面としては両社とも個人旅行事業ではオンライン販売の強化を目指す。KNT―CTホールディングスは「DX(デジタルトランスフォーメーション)、ITの分野で、すさまじく遅れている」(米田昭正社長)。募集型企画旅行の国内「メイト」、海外「ホリデイ」の両ブランドを21年3月末で終了し、ダイナミックパッケージ(DP)をベースに販売を伸ばす。
JTBもダイナミック化を推進。国内旅行のDPは「現在22%を占めるが、21年度には8割ぐらいになる」と山北栄二郎社長。
19年末に中期経営計画「TRANSFORM2025」を発表した日本旅行も「特にデジタル化への対応にしっかりと取り組む」(堀坂明弘社長)という。
店舗営業を軸としてきた大手旅行会社にとってオンライン販売強化は簡単ではない。最大手のJTBでさえ、包括的業務提携契約を締結したアゴダの技術を生かして「るるぶトラベル」を20年2月に刷新したものの、一部機能に不具合が発生。利用者のみならず、宿泊施設からも早期改善を求める声が挙がった。
だが、店舗や人員を多数抱えていたために大胆なオンライン販売の展開に踏み出せなかった面があったとしたら、今回の構造改革が大きな転換点になる。破壊なくして創造なし。旅行会社の新たな姿が創造され、観光市場が今後さらに拡大することを期待する。