【焦点課題】日本旅館協会 会長 浜野浩二 氏に聞く

  • 2020年7月21日

浜野会長

新型コロナに注力

旅館業への支援、集客確保 観光の重要度 理解促進を

 ――6月に日本旅館協会会長に就任した。新型コロナウイルスで旅館経営は厳しい。いかに取り組むか。

 「コロナ対策で協会として取り組むべきことは大きく二つ。一つ目は、国などからの支援策を重層的に確保していくこと。政府は無利子融資や信用保証、雇用調整助成金などの施策を打ち出した。これらを活用して急場をしのいできたが、コロナの影響が長期化すれば、さらなる支援が必要だ。雇用調整助成金の特例措置の期間は9月30日までだが、旅館・ホテルは今、感染防止対策の関係で客室をフル稼働できないところが多い。こうした状況が長引けば、新たな対応を要望することも考えていく」

 「二つ目は集客。日本人の国内旅行は政府のGo Toトラベルキャンペーンが始まれば、必ず活性化する。一方でインバウンドをしっかり戻すことが重要だ。訪日旅行の需要がなくなれば、ひと昔前の市場環境に戻ってしまう。観光を取り巻く環境は、すでに多くの外国人の来訪を前提に観光地づくりや施設の建設がなされており、検疫態勢の強化や、東アジアの地政学的なリスクなど課題は多いものの、まずは年間3千万人を回復すべき。Go Toトラベルキャンペーンの終了後には、国内旅行は反動で需要が落ちることも予想される。その時までにインバウンドを回復させ、日本の隅々まで外国人旅行者が訪れるよう取り組みたい」

 ――旅館業の中長期的な課題に対しては、「政策」「労務・生産性向上」「EC戦略・キャッシュレス」の三つの委員会を設置した。

 「労務・生産性はコロナの問題がなければ、喫緊の課題と考えていた。人口減少、若年層の減少、サービス業への就業を志望する人の減少が進めば、いずれ旅館で働く人はいなくなってしまう。特定技能や技能実習などで外国人材を活用していく必要はあるが、全て外国人というわけにはいかない。旅館にも改善すべきところは多い。どこの業界でも働き方、休暇の改革を進めているのに旅館業界だけ後進的ではいけない。現に積極的に改善に取り組んでいる旅館もある。優秀な人材を確保するには、給与、待遇の水準を上げなければならず、そのためには生産性向上が欠かせない」

 「生産性に関連するが、宿泊単価にも問題がある。お客さまの要求というのは常に増していくが、サービスや施設に見合った料金水準というものを理解してもらった上で単価を引き上げていく必要がある。この50年間で宿泊施設の建築コストや従業員の給与は4~5倍に上昇したが、宿泊単価はそこまで上がっていない。こうした状況もあって宿泊業は生産性が低いと指摘されることがあるが、これらの宿泊施設が年間3千万人のインバウンドの土台を支えてきたのも事実。政策的に単価を上げるといっても、日本はあらゆる階層の旅行者を受け入れるのだから、高級ホテルだけに投資すればよいという問題ではない。政策委員会で議論してもらい、とるべき施策を提言していきたい」

 「EC戦略・キャッシュレス委員会はITや電子決済に関わる課題を担当する。協会では会員施設の宿公式プランを直販するシステム『DRS』(エス・ワイ・エス提供)の活用を促進している。IT社会がさらに進展すれば、宿泊予約の主流は直販に近付いていくと私は思うが、一つにはこの直販を追求することになると思う。航空券の流通にしても航空会社と旅行会社の間でさまざまな変化が起きているが、宿泊業界と旅行代理店、OTAとの関係はどうなるのだろう。将来に向けて旅館業の利益をいかに守っていくか、委員会で議論を深め、考えていきたい」

 ――協会会員や旅館業界に期待することは。

 「会員の皆さまには、旅館業が地域や国に果たす役割の大きさをもっと訴えていただきたい。旅館業は間接的にも他の産業への経済波及効果が大きく、観光振興を通じてインフラの整備を促進するなど、さまざまな面で社会経済に貢献している。インバウンドは優れた輸出産業で旅行消費だけでなく、訪日旅行で体験した食材などの輸出も増加しているという。あれだけのコロナ禍にもかかわらず欧州には早くも域外の観光客誘致に動いている国があるが、これも観光産業が重視されているからだ。日本が『観光先進国』になるには、地域や国の観光への理解が不可欠。そのためには旅館経営者、旅館業界が“自立”し、常に地域や社会に貢献する“利他”の姿勢を示すことが必要だ。それが企業、業界への信頼につながり、観光の理解、発展につながる」

【聞き手・向野悟】

浜野 浩二氏(はまの・こうじ)北海道洞爺湖町出身。1972年萬世閣社長、75年成城大学経済学部卒、2003年ハマノホテルズ設立・社長、11年萬世閣会長(12年退任)、12年日本旅館協会理事、18年同副会長。70歳。運営施設=奥定山渓温泉佳松御苑、旭岳温泉ホテルベアモンテ、旭岳温泉ホテルディアバレー、定山渓温泉に新規ホテル開業予定

 

 
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