
渡邊部会長
全旅連シルバースターの運営方針
登録施設のメリット追求 千軒目標に申請を簡素化
「人に優しい宿」の普及に努める全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)のシルバースター部会。今月2日の総代会で6代目の部会長に就任した渡邊幾雄氏に部会の今後の運営方針と具体的取り組みを聞いた。
――新たに部会長に就任。現在の心境と抱負を。
「歴代の部会長は初代の大木さん(大木正治氏)から山本さん(山本清蔵氏)、野澤さん(野澤幸司氏)、多田さん(多田計介氏)、そして直前の中村さん(中村実彦氏)と、今の全旅連を運営する中枢のメンバーがそろっている。大変なプレッシャーで、歴代の皆さんと比べられると困るが、プレッシャーを力に変えて頑張っていきたい。皆さんよく会議に参加されて、和気あいあいとした雰囲気の中、そのつど的確なアドバイスをいただいており、大変ありがたい」
――シルバースター部会について、改めて説明を。
「全旅連は高齢化社会を迎えるに当たり、高齢者をはじめ、誰もが利用しやすい宿を普及しようと、設備、サービス、料理の面で一定の基準を満たした宿を登録する『シルバースター登録制度』を平成5年につくった。その推進役となるのがシルバースター部会だ」
「全国の宿のシルバースターへの登録促進や、制度の一般消費者への周知、登録施設へのメリットの追求、その他調査研究など各種の事業を行っている」
「登録施設は現在、全国に692軒。かつては千軒を超えていたが、施設の廃業やさまざまな事情でこのところ減少している。これを増やすことが当面の目標だ」
――シルバースターに登録するにはどうすれば。
「ハードルは思ったほど高くない。主な登録基準は『共同浴室は、手すり、スロープ、シャワーチェア、椅子やベンチ等を設置して高齢者の利用に配慮すること』『食事は高齢者に配慮したメニュー(献立)の提供もできること』『従業員に対し高齢者の宿泊客に接する際の配慮等の教育を行うこと』など17項目。登録申請をいただくと、私どもの登録審査委員会の審査を経て、晴れて登録となる。OTAなどの口コミ評価で一定の評価を得ている施設なら、まず問題ないだろう」
――登録施設へのメリットは。
「全旅連の本部事務局と直接つながりを持てることだ。全旅連の会報『まんすりー』やその他の情報は、通常は本部から都道府県の旅館ホテル組合を通して組合員の旅館・ホテルに送られるが、シルバースターの登録施設には本部から直接送られる。経営に役立つ情報をいち早くキャッチできる」
「登録施設への集客事業として、楽天トラベルに『人に優しい宿』のコーナーを作っていただいている。年間数十億円もの送客実績がある。直接の集客効果があるというのが一番大きいのではないか」
――今年度の部会の主な事業は。
「施設に役立つ情報として、さまざまな分野のガイドブックを発行している。近年はHACCPの手引きや、外国人労働者を念頭に置いた多言語の衛生管理マニュアルを作成した。今年度は旅館・ホテルの生産性向上に役立つマニュアルを作成したいと考えている」
「消費者に向けた制度を周知するキャンペーンや、各種の集客事業も引き続き行いたい」
――登録施設の拡大は。
「かつて到達した千軒を目標にしたい。部会の役員である全国47都道府県の地区委員の方々に、近隣の宿に登録を呼び掛けていただく。あとは登録を行うための申請書をできるだけ簡素化し、申請に向けての心理的ハードルを下げる」
「全旅連は全国におよそ1500の支部組合を持つ。それぞれに1軒ずつ登録施設があれば、目標の千軒を超えることになる。1支部に1軒以上の登録を目指したい」
――未登録の施設にアピールを。
「シルバースターという名前から、『施設をお年寄り専用にするのは嫌だ』と誤解を受けたことがあるが、決してそうではない。全ての人に優しい施設にしませんか、という提案だ。体にハンディのある人も積極的に受け入れていかなければ、これからの時代は自社の経営にも厳しく、周りからも認められなくなるのではないか」
「手間も費用もそれほどかからない。ぜひ、趣旨をご理解いただき、積極的に登録申請をしていただきたい。各県の事務局や地区委員に気軽にお声がけをいただきたい」
渡邊 幾雄氏(わたなべ・いくお)昭和33年9月3日生。栃木県塩原温泉郷「やまの宿 下藤屋」社長。日本旅館協会副会長、同協会関東支部連合会会長など公職多数。62歳。
【聞き手・森田淳】