高まる危機管理の重要性
2019年も地震や台風など自然災害による被害が相次いだ。特に、9~10月の台風15、19号は各地に深刻な被害をもたらし、深い爪痕を残した。今も懸命な復旧・復興作業が続けられている。
自然災害は毎年のように起こるが、より深刻化しているような気がする。国民や企業、自治体、国に甚大な経済的、財政的損失をもたらしている。観光面でも同様だ。被災すれば客足が遠のくばかりか、観光客の自由も奪う。外国人を含めた観光客への災害情報提供の在り方、避難方法などクリアすべき課題は多い。
自然災害は必ず起きるとの前提で、危機管理体制を構築すべきだ。日本観光振興協会の久保成人理事長は「事前・事後の行動計画をあらかじめ作り、訓練しなければいけないことを痛感している。その際、地域住民はもとより、外国人も含めた旅行者のことも想定したものでなければならない」と指摘する。
19年11月、山梨県富士吉田市で、大規模な災害が発生した時に外国人を含めた観光客の避難方法を考えるセミナーが初めて開かれた。こうした試みが各地で開かれることを期待したい。
近年いわれるのが、災害時における外国人への対応をどうするかだ。安心して旅行できる環境づくりは観光立国を実現する上で欠かせない。
観光庁が監修している訪日客向け災害時情報提供アプリ「Safty tips」に、地方自治体が発信する避難勧告などを多言語で通知できる新機能が追加された。アプリであらかじめ登録された地点について、地方自治体がLアラートを通じて発信する避難勧告などを、多言語によるプッシュ型で通知するという。外国人にこうしたアプリがあることを周知徹底、有効活用してもらうのが肝心だ。
JR高松駅には、災害などが発生した時、外国人にも分かるように、4カ国語で表示される「多言語表示観光ウェルカムボード」が設置されたという。
災害に強いインフラ整備による「国土強靭(きょうじん)化」も真剣に検討すべき時に来ている。大雨による道路の冠水や堤防の決壊による河川の氾濫、ライフラインの寸断など、大きな被害が出ている映像を見るにつけ、「このままでいいのだろうか」と思う。
財政負担や、談合や不透明な金のやりとりなど公共工事に対する不信感も分かるが、災害に強い国土づくりは優先事項の一つといえよう。