【沿岸被災地3県 旅館を取り巻く現状と課題】宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合 佐藤勘三郎理事長


宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合 佐藤勘三郎理事長

震災遺構巡る 観光の新たな芽も

 「10年ひと昔」という言葉は真実だと思う半面、当事者側に寄り添った言葉ではないことが東日本大震災を経験した身としてよく分かります。

 「ひと昔」とくくってしまうには、あまりに有象無象の事柄が押し寄せ過ぎ、10年たった今でも咀嚼(そしゃく)できずにいます。かと言って、決して今の日本が置かれている状況を見誤っているわけではありません。

 今や日本列島に降りかかる災害は残念ながら恒例行事の様態を示しています。その都度、被災地における救助活動や救援活動は当然何をおいてもこれにあたるべきでしょう。そしてこれも災害の一つといってよいのでしょうか、新型コロナウイルスは国民生活や企業の経済活動に大きな爪痕を残しました。

 否、まだ傷は広がりつつあります。多くの社会的弱者がさらに弱い立場に陥ることになってしまいました。そんな状況の中、私たちは震災10年をどう迎えれば良いのでしょうか。

 「復興五輪」の勇ましい掛け声のもと誘致が決まったものの、今ではその看板もすっかり色がくすんで見えます。原発事故により脱原発に向かって大きくかじを切るかに見えた電源政策も「原発7基 新増設維持」のニュースで期待がしぼみ「安全神話」が息を吹き返したかのように感じました。私たちは震災から何を学んだのでしょうか。

 その一方で震災を忘れないための震災遺跡を巡る新しい観光も芽生えています。宮城県山元町では昨年10月に県南としては初めての「震災遺構中浜小学校」が震災10年を目前にし、一般公開が始まりました。隣の亘理町でも災害危険地区に指定された60ヘクタールを新産業の集積地にする計画が始まりました。

 日本が戦後絶望の中、焼け野原から復興したように宿泊・観光産業も困難にくじけず、ピンチこそがチャンスの芽である認識を持ち、果敢にチャレンジしていきたい。そして11年目を迎える今、「あの時がターニングポイントだったね」と笑って語り合えるような宿泊産業の将来を夢見て行きたい。

(ホテル佐勘)

 
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