【日本ふるさと紀行 45】猪苗代(福島県猪苗代町)~医学者・野口英世のふるさと 旅行作家 中尾隆之

  • 2019年4月14日

磐梯山を仰ぐ猪苗代湖北畔の里

 福島県中央部に位置する猪苗代町は、四季の彩り鮮やかな景勝地。山や湖沼、渓流とともに多くの人が訪れるのが、医学者・野口英世の生家と記念館である。

 英世(清作)が旧三城潟村(猪苗代町)の貧しい農家の長男に生まれたのは明治9年(1876)。1歳半の時、母シカの食事支度の隙に囲炉裏に落ちて左手の指が癒着する大火傷を負う。

 公開の生家にはその囲炉裏や、医師を志して19歳で上京の折に「志を得ざれば、再び此の地を踏まず」と刻んだ床柱も残っている。

 才智と努力で苦難を乗り超えて医師の夢を果たし、外国で研鑽してノーベル賞候補に挙がる世界的な医学者になった。しかし黄熱病研究で赴いた西アフリカで自身が罹病して死亡する。

 惜しまれた51年の生涯は教科書や伝記本で広く知られた。日本では千円札にも切手にもなっている。

 4年前にリニューアルの隣接の野口英世記念館には19歳までの猪苗代・会津若松時代、4年の東京時代、18年のアメリカ・デンマーク時代、10年の中南米・アフリカ時代の生活や業績が分かりやすく記されていた。

 その背後には進学を勧め支え続けた生涯の師・小林栄をはじめ実に多くの内外の人々の支援があった。また火傷の悔いを負う母シカの無償の愛も英世の背中を強く押した。帰国を哀願するたどたどしい文字の母の手紙に目頭が熱くなった。

 24歳で渡米した英世から小林先生への手紙には「夢を見るのは必ず高等小学校時代か幼年時代だけ」とあり、運動会、鳥捕り、水遊び、田んぼ、親友、働く母…と綴ってある。辛いことが多かったはずなのに、心身ともに鍛えられた猪苗代の自然や人々へ望郷の思いを募らせた。

 15年後の1度だけの帰国では、恩師や母を誘い関西を旅し、母校で講演もした。

 今日の猪苗代は観光や実りで四季ににぎわう明るく豊かな町だが、なお野口英世のふるさととしても輝き続けている。

(旅行作家)

 ●猪苗代観光協会TEL0242(62)2048

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