【日旅連総会特集】日本旅行 常務取締役 舘 真氏に聞く


日本旅行 常務取締役 法人営業統括本部長 舘 真氏

変化する市場ニーズに全て応える

 日本旅行の「法人営業」について、今年度の重点施策を聞いた。(聞き手=本社・森田淳)

 ――新型コロナに翻弄(ほんろう)された1年。特に法人営業は厳しい状況だった。

 舘 年間の団体旅行販売額は250億円程度で、このうち国内は225億円ほど。目標のそれぞれ26%、30%程度にとどまった。

 官公庁やDMOなど組織団体の地方創生事業や観光誘致関連の仕事で前年の4割程度の受注があったものの、企業関係は2割程度しか動かなかった。その2割も大半が3月までの数字だ。目的形態別では、慰安型が前年比9%、インセンティブが10%と、ともに1割程度。大きい人数が動く団体はほぼ消滅した。人の動きというよりも、BTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)を含めた包括契約をしている企業の業務委託的な仕事で数字をつくったというのが現実だ。

 Go Toトラベル事業は企業が一部でも費用を負担する旅行には適用できなくなった(その後、自己負担分のみ対象)。残念ながらGo Toは、団体の部分では、修学旅行以外では大きな効果を発揮しなかった。

 教育旅行は年度上期の緊急事態宣言でストップした公立中学校の旅行が秋口に実施された。年間を通しては9割近くの中学が修学旅行を実施したのだが、従来の沖縄や関西、東京方面ではなく、北海道の学校は北海道、九州の学校は九州と、エリア内での実施が増えた。そのため1校当たりの取扱額がおよそ半減した。

 高校や私学が秋に行う予定だった旅行の実施率は2割。今年の1~3月に延期した学校が多いのだが、再度の緊急事態宣言で多くがキャンセルになってしまった。東京都などは宣言下での旅行の実施を認めていないので、完全に消滅した形だ。

 昨年は官公庁関係、そして包括契約する企業からの旅行以外の仕事での収入が非常時における収入として非常にありがたかった。

 

 ――今年は。

 舘 取扱額860億円程度、うち国内でおよそ700億円を目標に掲げている。官公庁関係が前年比100%を超す先行受注となっている。ただ、インセンティブを含めたMICEと慰安親睦は、残念ながら50%を切っている。

 われわれが生き残るために、まず何をしなければならないか。地方自治体を含めた行政へのセールスが最優先と考えている。2020年度の3次補正、4次補正、あるいは新年度の予算で、どんな事業が出てくるか分からないが、人を動かす旅行の部分以外でも、関われるものがあれば積極的に関わる。われわれが持っている人という武器を最大限に生かす。

 

 ――旅館・ホテルと関わるところでは。

 舘 一つの例としてワーケーションがある。既にエリア全体や宿泊施設単独でモニターツアーなども行われているところがある。

 ワーケーションといっても仕事ができるスペースがあって、Wi―Fiが整備され、あとはレジャーがあればいいというものではない。家族で来た場合にお子さまやペットのケアをどうするのか、長く滞在する場合に毎日旅館の食事メニューでいいのか、などの問題が出てくる。そのようなBCPにつながる課題を地元の皆さまと考え、誘致をできればいいと考えている。

 

 ――アフターコロナを見据えた中長期的取り組みは。

 舘 法人のマーケット自体が、コロナ以前のスタイルに戻ることはないと思っている。会議やコンベンションを、人々を1カ所に集めて行うという発想は、もうなくなるのではないか。大きな器を用意したり、交通費をかけたりせずにリモートで行えることが今回、広く認知された。DX(デジタルトランスフォーメーション)という、この先5年で変わるといわれていたものが、コロナ禍で急速に変わってしまった。

 マーケットの変化にどう対応するか。対応の仕方によって、われわれが今後、業として成り立つか成り立たないかが変わる。まずはDXの商材をどう提案するかだ。

 インセンティブは超大型といわれる千人、2千人規模は、もうほとんど見込めないと考えた方がいいかもしれない。家族単位など小規模だったり、物に変わったりする流れが今後続くだろう。旅行なら分散型で、どれだけお客さまに満足してもらえる提案ができるか。物品ならば、お客さまのニーズに合わせたものをどう提供できるか。人の流れだけでなく、物の流れにまで関与をしなければ、われわれ旅行業としても成り立っていかないのではないか。

 法人営業イコール団体営業を中心とした旅行代理店営業として長年取り組んできたが、そこから大きく脱皮した、法人のニーズに全てお応えできるソリューション業になっていかねばならない。

 

 ――日旅連会員に一言。

 舘 マーケットの厳しい話をしたが、企業や組織団体向けのセールスは引き続き行うわけで、当然、拡大を目指す。先ほどお話ししたワーケーションの取り組みも含めて、以前のようなスタイルに戻らないとしても、皆さまの施設にしっかりとお客さまを送れるように努める。

 リモートで結ぶコンベンションも、企業のオフィス同士を結ぶのではなく、皆さまの施設を拠点とするような提案を考えている。

 われわれは旅行会社で唯一「SDGs宣言」をして、その目標達成に努力している。今後はSDGsをテーマとした研修や教育旅行を企業や学校に提案する。その宿泊先や研修先として、皆さまの施設や地域に人を呼びたいと考えている。

 さまざまな形でお客さまの掘り起こしをしっかり行い、皆さまの施設への送客に努める。

 

日本旅行 常務取締役 法人営業統括本部長 舘 真氏

 

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