●親しみのある応対
旅館ホテルの応対は、お客さまから聞かれるのを待つだけでなく、こちらからすすんで会話を進めることに大きな意味があります。これが旅館ホテルと欧米型のホテルとの違いです。
まず、一言声をおかけすることから始めます。それによりお客さまとのコミュニケーションの糸口をつかみます。そのための話題としては、むずかしい内容ではなく、お客さまの関心を引くものがいいでしょう。その日のお天気や翌日の予報、道路の混み具合、近隣の観光スポットやお勧め情報、郷土料理、お土産、趣味、出身地、など。こうして、糸口がつかめたら、緊張がほぐれるような雰囲気を作りながら会話を進めていきます。これによってお客さまが本音を言いやすくなります。ただし、なれなれしい態度はいけません。あくまでもお客さまと仲居との関係ですから、きちんと「間」をとることが必要です。
同時に、お客さまの様子に注意を払うこともまた、大切です。疲れているから話しかけてほしくないと思っている方や、あるいはこちらの話に興味のない方もいらっしゃるかもしれません。様子と頃合いを見計らって会話を切り上げます。しつこく思われないことが大事です。
またお客さまとの会話中は、常になにか要望がないかどうかに注意して耳を傾けます。お客さまの言葉をただ聞き流すのではなく、できれば「メモ」をとるようにします。メモ用紙と筆記具は常に携帯し、すぐに取り出せるようにしておきます。こうすることで、お客さまのご要望やご希望をしっかり把握できます。
●「やさしい想像力」を身につける
旅館ホテル業は「やさしい想像力」が求められる仕事です。これが旅館ホテルのおもてなしの基本にあることを常に意識して、この力を日ごろから養うようにしましょう。
例えば、お客さまが寒そうに、あるいは暑そうにしていらっしゃるなら、すぐに空調の温度調節をする。喉の調子が悪いようなら、加湿器などをお持ちする、といったようにです。もし自分の家族がそのような状態になったらと考えるとおのずから気づくようなことばかりです。けっして難しいことではないのです。常にやさしい想像力でお客さまを見ることが大事です。その視点で行動することが旅館ホテルのおもてなしには求められます。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。