作業時間を計って、それをもとに標準作業時間を割り出す考え方について前回述べた。これをあらためて算式として示す。
標準時間=観測時間×レイティング+余裕時間
前回をお読みいただいていない方のために簡単に補足すると、「観測時間」は、手慣れた人によって行われる作業時間を実際に計ったもの、「レイティング」は、「普通の人」が行う速さを想定して持たせる幅(熟練者の1割~3割増し程度)、「余裕時間」は、トイレ休憩など、作業そのもの以外に見ておくべき余裕の時間である。(詳しくは前回参照)
単位は、客室清掃・セットアップなら「人・時/室」、食器洗浄なら「人・時/食」となる。
※「人」=スタッフ人数、「時」=時間、「室」=客室数、「食」=提供食数。
使い勝手に合わせてこれを「逆数」(スタッフ1人1時間当たり○室、スタッフ1人1時間当たり○食)としてもよい。
さて、ではこれをどこに生かすか?…前回もお伝えしたように「人員配置計画」である。
(22)標準時間にもとづく人員配置
定量化できる作業は、標準時間をもとに「配置人員」を決める。次のような関係になる。
やるべき作業量=標準時間(速さ)×作業時間×人数
従って、
人数=作業量÷(標準時間(速さ)×作業時間)
(例)清掃すべき客室数が20室、客室清掃に要する標準時間が0・5人・時/室(1室につき1人で30分)、作業に充てられる時間が昼間の5時間とすれば、標準配置人員は20÷(0・5×5)=8人…となる。
少し面倒に思われるかもしれないが、一度やってみればそれほど難しいことではないので、ぜひここまで割り出していただきたい。
現場ではいろんな予定外のことも起こる。飛び入り客を受けているところなら、当日に増えるのは茶飯事だろうし、スタッフが急な病気で休むこともしばしばある。こうした事態を想定してバッファ(緩衝余裕)は見ておかなくてはならない。
ただしここでそうした分まで人員配置に反映させないことが肝要だ。タップリ料金をもらって余裕ある人員態勢の許されるところはいざ知らず、このような余裕までみて配置していたら、儲かる体質など築くことはできない。
ではどうするか?…ここに他部署からの協力・応援を生かすのである。協力・応援のあり方については別の場であらためてふれたい。
さて、このようにして決めた人員配置も、なお現場の実情とミスマッチを生ずる可能性がある。だから導入当初には、業務に支障をきたすような無理がないか、残業が想定以上に発生していないかなど、経過を観察するようにしたい。これは繁忙日に限らない。むしろヒマな日の過少な配置で無理が生じている可能性もあることを念頭に置いておこう。
なお、こうしたやり方を導入する際に、現場スタッフの納得を得るためには、「標準時間」の設定プロセスを分かりやすく説明するのが有効である、と言うより、作業時間を計ったり、それをもとに標準時間や配置人員を割り出す作業そのものを、現場の社員と一緒にやると良い。
(株式会社リョケン代表取締役社長)