(15)使いこなすマニュアル
マニュアルは「使ってなんぼ」である。現場で使われないマニュアルは一文の値打ちもない。そこでマニュアルを活用するためのポイントにふれておきたい。
(ⅰ)親しみやすく
要は「やること」や「やり方」がわかればよいのである。見やすい、見て楽しいものであることが望ましい。そのためには文字ばかりでなく、図やイラストや写真をどんどん使うことをお勧めする。
(ⅱ)1項目1枚主義
1項目で何ページもあるマニュアルでは実用性があまり期待できない。なるべく1枚、多くてもせいぜい2枚にまとめ、それを超える場合は項目を分けることを検討する。そうすれば項目のタイトルも単純明快なものになるはずだ。2穴リーフにしてファイルへの出し入れが簡単にできるようにしておこう。1項目1項目が身軽なので、改訂や差し替えもフットワークよくできる。
(ⅲ)見つけやすく
情報は多くなればなるほど「検索性」がモノを言う。知りたいことをすぐに見つけられるようにしておくことが肝心である。見つけにくい情報はないのと同じと理解したい。
重要なのは「目次」である。ここで大事になるのが項目の体系―つまり全体の中での各項目の位置付けをきちんと行うことだ。これをおろそかにしてはならない。さらに、身近なキーワードから探すことができるよう、「索引」を作っておくともっと良い。
(ⅳ)しまいこまない
マニュアルはいわば会社のノウハウ資産だ。全体を一括管理して散逸・重複・矛盾を防ぐことは必要である。しかし、だからといって綴じ込んでおくだけが能ではない。重ねて言うが「使ってなんぼ」である。頻繁に参照するものは、保管用とは別にそれだけ現場に貼り出すなど、「使える状態」にしておくことを考えよう。
(ⅴ)教育訓練での活用
マニュアルが教育指導の効率を高めることは前にも述べた。先輩社員の曖昧な経験や勘に頼るよりもはるかに正確な伝達が期待できる。だからここでも大いに活用していきたい。
ただその際、「マニュアルにこう書いてあるのだから、黙ってその通りにやればいい」といった教え方はよろしくない。「やること」「やり方」はもちろんマニュアル通りで良いのだが、大事なのは「なぜそれをするのか」「なぜそういうやり方をするのか」という理由を理解させることである。これが前回述べた「マニュアル依存症」の弊害を避けることにつながる。
(ⅵ)定期的な見直し
マニュアルが単なる「飾り物」になってしまう最大の要因は、一度作ったきり見直しが行われないことにある。定期的な見直しと改訂をしよう。「定期的な」というのがポイントである。つまり見直しの時期をあらかじめ計画に組み込んでおくことだ。年に1度で十分だろう。全部やるのが無理なら、三つか四つのブロックに分けて、毎年その1ブロックずつ取り組むだけでも価値がある。
(ⅶ)重視の経営意思
全ての大前提となるのは、マニュアルの意義をしっかり位置付け、その活用を重視する姿勢を「経営意思」として示すことである。何ごともそうだが、あるべき期待効果を生むも生まないも、ひとえにこれにかかっていると言って過言ではない。
(株式会社リョケン代表取締役社長)