バス乗務員専門の求人情報サイトが登場したことで、「比較検討されやすい環境となることで、各プレーヤーの施策が多様化する」という現象が、バス乗務員採用の分野でも起こった。この動きはウェブ上でのサイト運営に加え、イベント会場を借り切って行う就職イベントを開始したことでますます加速されたと感じている。
就職イベント「どらなびEXPO」は、東京、名古屋、大阪で定期的に開催されている。
会場では、最大約70社のバス事業者がブース出展し、参加者に対し自社を訴求する。一角にはステージも設けられ、「バス会社の選び方」といった講座や、現役乗務員が登壇してのトークセッションも行われる。「バスドライバーnavi(どらなび)」を監修している筆者は、このイベントではもっぱらステージで講座などを担当している。
初めて同イベントが開催された際には、せいぜい紙のパンフレットをブースに並べる程度だった各バス事業者らだが、回を重ねるごとにブースに配置する社員の数が増え、装飾も華やかになった。小型のプロジェクターを持ち込み、研修風景などの動画をブースで放映する会社も増えてきた。現役の乗務員が、当日の乗務から離れ出張扱いで、制服姿でブースに立って参加者に「生の声」を伝える姿も目にする。
このようなイベントに積極的に出展するようなバス事業者の採用担当者らの間に、以前のような受け身の姿勢は今や見られない。
しかし、残された課題が二つある。
一つは、これらの動きが、広告費やブース出展料を負担することのできる、採用規模の大きい事業者に限定されていること。もう一つは、これらのサイトやイベントは「もともとバス乗務員という仕事に興味がある人」の背中を押し正しくマッチングする「プル施策」としては有効だが、バス乗務員という仕事を新たに選択肢として認識してもらい、新しい「なり手」を創出する「プッシュ施策」としては限界があることである。
(高速バスマーケティング研究所代表)