【地域創生と観光ビジネス7】地域に根ざすプレミアム・アウトレット 再エネ利用も 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 今秋、埼玉県深谷市に開業する「ふかや花園プレミアム・アウトレット」は三菱地所・サイモンが展開するプレミアム・アウトレットとしては約10年ぶりの新規開業で、ポストコロナにおける観光ビジネスの急先鋒(せんぽう)となりそうだ。

 というのも、単一の商業施設の誘致にとどまらないユニークな観光まちづくりの手法が用いられているからで、それを「花園IC拠点整備プロジェクト」と呼んでいる。

 関越自動車道の花園インターには、秩父鉄道(本社・熊谷市)が近くを走る。2018年には、新駅「ふかや花園駅」が開業した。深谷市は、新駅の北側一帯をゾーニングして土地区画整理事業を行った。アウトレット(民間ゾーン)に隣接する公共ゾーンには、農業と観光を融合した「深谷テラス」が、去る5月に開業したばかり。なかでも食品大手のキユーピーが展開する複合施設「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」は、収穫体験ができる農園と地産地消に取り組むレストラン、マルシェがあり、家族で楽しめる。さらに市は、周辺の七つの自治体(秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、寄居町)と観光連携協定を締結して、広域的な活性化を目指している。

 深谷市は、近代日本経済の父・渋沢栄一の生まれ故郷で、NHK大河ドラマで興味を引いた人も少なくない。周辺にはゴルフ場が多く点在し、筆者も月に1回は平成倶楽部鉢形城コース(寄居町)でプレイする。鉢形城は要害堅固な平山の城で、日本100名城に数えられる。

 さて、私たちの暮らしのなかにすっかりと定着したアウトレットだが、もとは99年から2000年初頭にかけてのデフレ局面で新規開業が相次いだ。現在では、日本全国で35カ所を数える。メーカーは、アウトレットでしか入手できない専用商品を製造するようになり、新たな流通チャネルに成長した。街区のようなつくりで非日常を感じられることから、観光目的で来訪する人も少なくない。

 歴史をひも解くと、欧米のハイブランドが縫製工場の敷地内にファクトリーアウトレットを設け、それらが集積されてモールを形成したのが始まりで、米国がピークアウトした90年代後半に日本に上陸したビジネスモデルである。

 国内では三井系と三菱系の二強がアウトレット市場でしのぎを削っているのは周知の通り。ただショッピングするだけでなく、体験や周辺観光施設との連携などで集客力を高め、観光ビジネスの一翼を担ってきた。コロナ禍に政府は、これら大規模商業施設に対して休業要請を繰り返したのは記憶に新しいだろう。

 近ごろは電力不足が深刻化し、かつてないエネルギー危機に直面している。企業においては二酸化炭素排出量削減が求められ、持続可能性を求める向きも活発だ。

 全国のプレミアム・アウトレットでは、環境月間の2022年6月から、フードコートやトイレなど共用部の電力を100%再生可能エネルギーに転換させたばかり。グリーン電力証書(環境付加価値を認証評価する方式)と、広大な駐車場に太陽光パネルの屋根を取り付けたカーポート型太陽光発電でまかなう。

 地域に根ざし、進化するアウトレットのこれからに期待したい。

 (淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子) 

 
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