【地方再生・創生論 268】部活が民営化の方向に 松浪健四郎

  • 2022年7月15日

松浪氏

 少子化の影響は、学校の部活にまで影響を与えている。すでに高校野球では、複数の学校でチームを作り大会に出場できる。だが、全国大会の予選に出場する高校は、最盛期より約千校も減少しているのだ。野球に限らず、他のスポーツ部や文化部でも減少の一途で、文部科学省・スポーツ庁は部活のあり方を検討中、おそらく民営化の方向へ落ち着くようだ。

 少子化だけが影響しているのではなく、先生の負担の大きさ、働き方改革からの一面も大きい。昔は許可されていなかったが、現在では小学生の全国大会が開催されている。熱狂する親や家族、どうしても勝利至上主義や精神主義に走ってしまう。日本柔道連盟は、小学生の全国大会を中止した。アメリカでは、高校生以下の全米大会はなく、最大は州大会にとどまる。国の大きさもあるが、教育的配慮である。大学生になって、やっと全国大会があるにつけ、スポーツ種目は限られる。

 政府は、学校教育内の部活を小中学校ではやめさせ、施設を開放して民間団体にクラブを作らせ運営する欧州のような形を考えているようだ。先生の負担が軽くなるばかりか、チームメイトの数も確保することができる。すでに自治体によっては、条例を作って民間から指導者を招いて指導に当たらせ、先生の負担を軽減させている。おおむね指導者の年齢は65歳以下とし、指導者のキャリアを教育委員会がチェックする。

 次のステップは、民営化である。民間会社が、クラブを経営する。学習塾やピアノ教室と同様だが、公立学校の施設である運動場や体育館を民間会社に貸し出す。学校の部活ならば、世帯収入に関係なく、どの生徒でも参加できたが、民営会社がクラブを経営するとなれば、親の負担が大きくなる。条例によって自治体が一部を負担するのか、それともスポーツ庁がリーダーシップを発揮して「スポーツくじ」(サッカーくじ)の売り上げから補助金を出すのか、生徒の負担を軽くする必要がある。すでに、誰もが反対できないほど、少子化が進行している認識を共有せねばならぬ。

 地方の知人が電話をしてきた。「条例によって、中学校でバドミントンを教えてきたがクビになってしまった。65歳が定年なのだが、他に指導者がいないので生徒たちが困る。なんとかならないだろうか」という。毎月の指導料は1万円だったというが、金銭よりも指導の楽しみを奪われてしまったのだ。市長も教育長もよく知るが、条例を無視することはできない。指導者を民間に移行するとなると、さまざまな問題が出てくるが、部活を地域主体の運営に切り替えるしか方法はない。

 経済産業省は、この切り替えを「サービス業への転換」として位置付けようとし、スポーツ産業の部門に組み入れようと考えている。中央省庁がタッチすることにより、「スポーツくじ」の運用が容易になり、生徒たちの負担を軽減できる可能性もある。「スポーツくじ」は、現在はサッカー(J1)だけだが、近くバスケットボール(B1)も対象になり、売上金が増大する。やがてラグビーも視野にあり、当初の売り上げ1800億円に達するかもしれない。この法案の提出者の1人だった私は、経産省まで食い込んでくるとは想像していなかった。

 各中学校で部活に情熱を傾ける教員も多いが、この人材の活用も考慮して民営化すべきだ。ただ、指導者たちが生計を立てられるような制度設計ができるのか、資格をどうするのか、かかる問題の解決策は難しいかに映る。すでに全国200校で文科省はモデル事業として実施しているが、2023年度には民営化は現実のものとなりそうだ。各自治体は、とりあえず指導者を募り、教育委員会が指導者認定を先行させるしかないと思われる。

 部活動には人間形成を達成する教育的価値が高い。地域によって、自治体によって、部活動の民営化が不十分であれば、生徒たちは充実した生活が送れない。地域差の出ないように各自治体は工夫、努力せねばならない。

 
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