【地方再生・創生論 197】大阪の「都構想」が投じた一石 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2021年1月11日

 2020年11月に行われた2回目の大阪市の「都構想」は、住民投票の結果、再び否決された。賛否の差は、わずか1万7千票、提案した大阪維新の会からすれば、あまりにも無念だったに違いない。とはいえ、府と市の二重行政をなくそうと提案して、住民にその判断を委ねた積極性は評価されていい。

 橋下徹大阪府知事が誕生した折、私は知事と府と市の二重行政について語り合ったことがある。当時、府と市の首長の支持母体が異なり、市は府に対して協力的であったとはいえない状況下にあった。かつて府と市が協力してオリンピック誘致運動を展開し、立候補して中国・北京に敗れた際は、両自治体の関係はまず良好であった。

 もともと府よりも市の方が権威があると見られていた。市長の方が知事よりも給料が上、市会議員の給料は府議会議員を上回り、市会議員が秘書を持つという具合であった。

 そもそも大阪市は、日本最初の市であり、その歴史と伝統は市民も共有し、誇りとしていた。その「大阪市」を廃止しようという住民投票は、市民にとっては複雑な思いがしたのかもしれない。選挙では強い支持を得ていた大阪維新の会をもってしてでも「大阪市」を廃止することができなかったのである。

 市民の「大阪市」への愛着があったかもしれないが、橋下知事が誕生し、市長も維新の会が占めてより、府と市の対立はなくなった。この状況が10年も続けば、市民たちは何の不合理性を感じず、今のままでいいではないかという投票結果を招来させたと思われる。

 大阪府が活力を失したのは、太田房江知事が当選する以前、横山ノック知事を生み大企業が本社を東京へ、東京へと移してからであろう。太田知事になっても流れは変わらず、改革は一歩も進まずじまいだった。変化のない大阪、府民は橋下徹という人材を知事に就任させ、活気が戻ってきた。いや、改革がどんどん進んでいたかに映ったばかりか、市の失政を次から次へとあぶり出す。

 で、府と市の対立が激しくなり、維新の会の橋下知事が市長に打って出るという奇策に走る。まさに橋下劇場の幕開けであった。「オモロイ」ことの好きな大阪人、橋下劇場のキップを買いまくった。今や、府議会も市議会も第1党が大阪維新の会だ。地方政治のあり方を徹底的に有権者に訴え、理解を得ている限り、維新の会は強い。加えて国会議員も維新の会が力を発揮している。

 ただ、堺市を巻き込むことができなかったところにインパクトを欠いた印象を受けた。当初、堺市も都構想に参加することになっていたが、当時の市長が寝返った。いや「堺」という歴史的な地名を失いたくなかった住民は、大阪市と一線を画したように映った。堺市には独特の文化があり、世界遺産もある。最初から都構想に入るには無理があった。

 さて、この大阪の都構想は、全国の自治体に、自治体のあり方、地方分権について、地方議会のあり方に一石を投じたといえる。地方の成長や課題を考えた場合、中央の大政党の流れをくむ議員が多数を占めた方がいいのか、それとも地方議会の派の構成は独自性が大阪のようにある方が好ましいかもしれない。地方議員は、国会議員の集票マシンにならず、自治体のため、住民のための存在であるべきだ。

 さらに、全国の県庁所在地の自治体と県の関係を見直す機会を都構想がもたらしたともいえる。二重行政がどうなっているか、政令都市としていかに独自性を発揮しているか、自治体のあり方を問われている。また、改革を推進させ、地方分権の議論や広域行政の研究等にも取り組む必要がある。

 大切なことは、選挙権を持つ住民の意識がどうかも問われる。政策を提示できない候補者に投票するような、縁を重視するような投票行動が昔日のごとく定着していたのでは自治体の発展は望めない。近年、自治体の議員を就職と考えている候補者も目立つという。選挙民が本気になって自治体を考えるような時代を迎えたいものだ。

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