【地方再生・創生論 184】若いがん患者を支援すべきだ 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2020年10月1日

 新型コロナウイルスを甘く見てはならないが、この感染症にばかり関心が集中している。人々が高齢化するに伴い、確実にがん患者が増加中なのだが、忘れがちのようだ。現在、日本人は1年間で約100万人超が、がんと診断されているのだ。女性が45万人、男性が57万人、恐れる数字だが、すでに私たちはがんに慣れてしまっているようだ。

 早期発見、ステージの若いがんであるならば、日本の高い医療技術、薬で完治する。私自身、前立腺がん、悪性リンパ腫、膵臓(すいぞう)がんを経験した「有病者」である。高齢者は時間に余裕があり、少しでも身体の異変を感じると病院へ行く。だが、若い人たちは、少々の異変があろうとも。ついついそのままにしてしまう。相当悪くなって病院へ急いでも手遅れ、末期がん患者になるケースが多いという。

 国立がん研究センターと国立成育医療センターが、2019年に発表した報告書によれば、15歳から39歳までのがん患者は、1年間でほぼ6万人に上る。この若い世代は、25歳を過ぎるとさらに増加、30代の発症が75%を占める。その8割が女性だ。子宮頸(けい)がんと乳がんが圧倒的に多い。就職や結婚という人生を左右する時期に、がんと闘う苦労は気の毒だ。

 この若い人たちが、40歳未満の末期がん患者たちが、在宅療養するとなると、高齢者と異なって「介護保険」を使うことができない。25歳からがん患者が急増するデータがあるが、国からの支援がない。そこで在宅療養に必要な福祉用具や訪問介護の利用料を助成する自治体が増えつつあるという。特に40歳未満の患者には、医療費の公的助成も対象外であるため、家族の負担は大きい。

 若い人は、がんにならないと昔は思われていた。ある意味では、がんは高齢者の病気と決めつけられていたゆえ、公的助成がなく、医療制度の「谷間世代」となっている。それにしても若い末期がん患者も、家族のいる自宅で医療を受けながら過ごしたいと考える。そこで、いくつかの自治体は、若いがん患者の在宅療養を支援する制度を始めているのだ。

 18歳未満の小児がん患者には、医療費の助成制度がある。若い両親の負担を考慮したに加え、それほどの患者数が多くなかったので公的な制度を作りやすかったともいえる。

 で、「谷間世代」の助成制度の先駆けは、兵庫県である。家族の経済負担を軽くし、安心して家族のいる環境で在宅療養をする。どれだけ心強いだろうか。兵庫県の助成は、15年度から開始され、月額5万4千円を上限に県と市町村が折半して負担する制度だ。

 この兵庫県の取り組みは、若い人の末期がん患者を勇気づける。末期がんといえども、近年の薬品は効果があるので進行を鈍らせる。兵庫県が公的助成を開始すると、この制度は一つのモデルとなって他の自治体も影響を受ける。私の住む横浜市は、16年度から開始した。横浜市の特徴は、20歳未満も助成制度に組み入れている点であろう。

 政府が「介護保険」の対象年齢を引き下げれば、さらに大きな助成ができるのだが、現在、その動きはない。そのために各自治体が助成制度を設けて支援する方法が現実的であろう。18年度から鹿児島県も最大7万2千円を負担している。市町村の財政負担も増大するが、自治体が若いがん患者の立場に立つことができるか、どうかが問われる。

 兵庫県モデルがあるとはいえ、まだまだ全国的な広がりが見られない。若いがんの末期患者の在宅療養について、自治体が十分に理解していないのかもしれない。国が「介護保険」の改革を進め、利用できるようになるまでは、自治体が積極的に若いがん患者を支援すべきである。兵庫県モデルのように県と市町村が互いに協力する方法だけではなく、少額であろうとも、各自治体が助成する自主性が見られない。がん患者の側に立つ自治体はないのか。

 末期がんの患者もつ家族は、どれだけ悲しみ苦しんでいるのか、その心を共有する自治体であってほしいものだ。

新聞ご購読のお申込み  ベストセレクション

 メルマガ申し込み

注目のコンテンツ

第33回「にっぽんの温泉100選」発表!(2019年12月14日号発表)

  • 1位草津、2位別府八湯、3位指宿

2019年度「5つ星の宿」発表!(2019年12月14日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」は?

第33回「にっぽんの温泉100選・選んだ理由別ベスト100」(2020年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「泉質」「見所・体験の充実」「郷土の食文化」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2019年度「部門別・旅館ホテル100選」(2020年1月11日号発表)

  • 「料理」「サービス」「風呂」「施設」「雰囲気」のベスト100軒

観光経済新聞の人材紹介

  • 旅館・ホテルの人材不足のお悩み無料相談はこちら
Visit Us On FacebookVisit Us On TwitterVisit Us On YoutubeVisit Us On Instagram