【地方再生・創生論 177】認知症を予防する方策 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2020年8月6日

 昨年10月、私は「私の肖像画・いろいろありました」(産経新聞出版)を刊行した。古希を過ぎ、比較的時間に余裕ができたので、己の人生を振り返って、それを活字にしようと考えた。認知症の予防にもなるだろうし「自分史」にまとめて人生を回顧するのも楽しい。何よりも糖尿病患者が認知症になりやすいというからクワバラ。

 最初からそのように考えたのではなかった。がん治療を終えて職務復帰した頃、産経新聞社から「話の肖像画」の連載の話が舞い込んできた。面倒くさそうなので断ろうとも考えたが、ある意味では波瀾(はらん)万丈の人生、その生きざまは特異で小説的ですらあると言われてみると取材を断れなくなった。2週間、10回の連載だという。で、インタビューが続く。かつて日本テレビの「いつみても波瀾万丈」という日曜の午前に放送された番組に取り上げられ、出演した経験もある。が、連載が始まると、テレビ以上の反響が寄せられた。本人は、別段、何とも思わない事象だが、第三者からすればおもしろいらしい。あっというまに10回の連載が終わった。大きなトピックだけが活字になったが、私からすれば不満足、不完全燃焼。そこで小さな事も記述する「自分史」を書いてみようと考えるようになった。

 昔を思い出すことは、脳を活性化させると耳にしたので、毎日が回想することが仕事となる。認知機能の低下を防止するどころか、すでに多くの事柄、体験を忘れてしまっている。で、書きたし、書きたして原稿用紙のマス目を埋めていく。私は今も手書き、アナログ人間そのものだが、辞書を片手に記述を楽しむ。

 人生を振り返る機会は、それほど多くない。妻に質問しながら、記憶をたどる。まさに「自分史」作りは、認知症予防につながると実感する。妻と昔を思い出しながら語り合う機会ともなったが、どっちの記憶が正確なのか、思い出が共有していないことに気づく。私はこれまで多くの著作を世に問うてきた。が、「自分史」となると、家族のこと、一族のことも書かねばならない。とくに具体的に両親について書きながら、いかに愛情を受けたか、いかに迷惑や苦労をかけたかを回顧する機会ともなった。

 政府も自治体も高齢者の認知予防や介護に役立つ政策に苦しんでいる。そこで「回想法」につながる「自分史」作りを支援する自治体も出てきた。それは随筆集、写真集、句集でもいいのだろうが、脳を活性化させるのが大切で、認知症を予防したい。自治体が各種の講座を開催して高齢者を刺激するのはおもしろい。老人大学なるものが全国あちこちにあるが、高齢者本人を主役にすべきだ。

 東京都文京区は2018年度から、委託した相談員が高齢者宅を訪問し、本人や家族と話し合いながら自分史をまとめる取り組みを始めた(日本経済新聞)。素人が、ましてや高齢者本人が、自身で「自分史」を作るのは難しいが、自治体が手助けしてくれるのだから、適当な緊張感をもちながらも楽しいに違いない。目次を作る。年代別に人生を書く。得意だったこと、住み慣れた地域のこと、自分らしく生きる動機を見つけたこと、書くことが多い。また、回顧する楽しみも大きい。

 日本経済新聞は、「自分史作りは高齢者施設でも広がっている。こうした中、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)は、自分史を記憶したロボットと高齢者本人が会話することで回想法と同じ効果を生み出す研究を続けている」と報じていた。若年性認知症も社会問題化しているが、自治体も住民の脳の活性化についても考えねばならなくなっている。

 そもそも、認知症は脳の働きが悪くなって障害が起こるものらしい。生活に支障が出るばかりか、家族全員が困ってしまう。厚生労働省の推計によれば、認知症患者は2025年には730万人、60年には1154万人に増加する可能性があるという。この数字は脅威的で、長寿はまっとうできても、多くの高齢者は認知症になる恐れがあると示唆している。さあ、自治体はどうすべきか、東京・文京区に続いてほしいものだ。

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