【地方再生・創生論 176】オリーブに見る農業への熱意 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2020年8月2日

 オリンピックの年になるとオリーブや月桂樹といったギリシャにちなんだ樹木が話題になる。日本にも外来種の樹木は多いが、オリーブと月桂樹は別格である。また、この2種は古代ギリシャの樹であると同時に地中海周辺の地域を彩ってきた。

 イタリアやギリシャおよび地中海の国々を旅行した人なら、毎日、毎食時にオリーブのオイル等で驚かされたに違いない。オリーブは昔から「生命の樹」と呼ばれ、地中海沿岸の国々の人々は重宝してきた。料理だけではない。日本人は火力に木材を用いたが、彼らはオリーブ油を用いた歴史を持つ。実に6千年以上前からオリーブに世話になってきたのだ。英語のオイルは、オリーブから生まれた。

 オリーブについて書くに至ったのは、小豆島がオリーブの島として輝いているからに他ならない。この「生命の樹」が、小豆島の人たちの手によって、産業化されていることは有名だ。その先見性に感服するしかないが、もともとしょうゆを製造していたことと関係すると耳にして、びっくりするしかない。

 人類の歴史を変えた作物のランキング9位にランクインしているオリーブ。ちなみに御三家は、稲、小麦、トウモロコシである。わが国にオリーブの苗が持ち込まれたのは1802年。薬用に用いるために徳川幕府の侍医であった林洞海がフランスから持ち込む。

 1908年に香川県の小豆島がオリーブ栽培試験地に指定された。魚の保存を目的としたしょうゆと油漬けの缶詰を作るのに、オリーブ油が必要になったからだという。当時、鹿児島等も栽培試験地になったが、小豆島だけが成功した。現在では、広島、岡山や香川県の各地で栽培されているが、小豆島はオリーブ栽培の優等生。500種以上あるオリーブの中でも、4品種を栽培方法に工夫を加えて生産する。

 私ども日体大は、毎年、卒業式の際、香川県の坂出市にある岡﨑農園(岡﨑慎太郎代表)から、オリーブの環を10個ばかり注文する。名だたる大会で日本代表選手として活躍した卒業生に贈るためである。古代オリンピックにちなみ、頭上にオリーブの環をかけるのが式典のクライマックス、万雷の拍手が起こる。オリーブの持つ歴史の一幕を飾る重みである。

 さて、和歌山県みなべ町の南高梅を例にするまでもなく、全国で各種の果実や花、野菜等の産地がある。日本人は研究熱心であり、感性も豊かであるゆえ、品種改良に余念がない。イチゴの改良は、どんどん進み、年中、おいしい新鮮なイチゴを食することができる。

 県や大きな自治体は、農業試験所や研究所を保持し、その地に合った品種づくりに熱心である。しかし、アーモンドやピスタチオ等の輸入に頼る品々は少なくはない。日本で栽培できないと決めつけているのだろうか。オリーブ栽培にしても、小豆島だけが結実させ成功した。工夫すれば、品種を選択すれば、日本の地でも風土が異なるにつけ栽培できるに違いない。研究心を旺盛にし、新しい植物をどんどん生産してほしいものだ。

 私は大阪の泉州地方で生まれた。農産品はタマネギが当時日本一だった。「今井早生」という新種を地元の農家が創り、全国に発送していた。淡路島、北海道北見市へと産地が移っていったが、やはり新種の出現が大きい。

 わが国は、農業国であることも忘れてはならない。全国に農学部を設置する大学も多い。自治体は、これらの大学と提携して新種作り、または外国の産品を国内で栽培しようとする気概がない。小豆島では、オリーブからさまざまな品々を作っているのだ。

 オリーブそうめん、オリーブ化粧品、オリーブ染め等をはじめ、油を軸に多様な産品、まさにオリーブ王国である。小豆島には樹齢千年のオリーブの樹がある。スペインから輸入されたという古木だ。2020年のオリンピック・パラリンピックを記念して、日本ライオンズクラブは東京都へ樹齢千年のオリーブを「平和の象徴」として寄贈した。小豆島のオリーブに負けない植物を産地にしてはどうか。

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