【地方再生・創生論 135】地方自治体の”反乱”を期待する 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年9月21日

どんなものでも“日本一”になるのは難しい。競争相手がいるゆえ、知恵を出さねばならない。総務省が「ふるさと納税」制度を導入して以来、各自治体の競争がすさまじい。タバコ税やゴルフ税もじり貧、自治体の収入源としてはふるさと納税こそが天からの恵みであった。知恵をしぼる、納税者心理を研究する。で、大阪府泉佐野市が平成30年度に498億円を集めて第1位の座についた。私の故郷である。

しかし上位4位までの泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4自治体は、ふるさと納税の対象から外された。ルールを守らなかったペナルティーだという。返礼品額は寄付額の3割以下、返礼品は地場産品に限るが近隣の自治体の特産品でもいいと総務省。この新制度もあいまい、火種になると思われる。返礼品を認めた総務省は、各自治体の本気度と研究力を予想できなかったのである。ともかく納税額ランキング4位までの自治体を顕彰せずしてアウト、失格とした。

中央省庁のキャリア官僚は、地方自治体の苦しみについて十分な理解をしていないかに映る。地方税を実質的に認めていない総務省、ならば、ふるさと納税を利用しようと考えて当然であろう。泉佐野市のごとく、関西国際空港の建設を受け入れ、政府に協力する姿は優等生だったが、空港の街として国際化を急ぎ、次々に施設を完備、そこへリーマンショック。ついに赤字再建団体に陥った。

しかし、迷惑施設の空港を受け入れたのに、政府は泉佐野市を支援することはなかった。市は、国の非協力ぶりと冷たい態度を学び、ふるさと納税に活路を開こうとした。

千代松大耕市長は、議会や市職員等に大胆なカット政策への協力を仰ぎ、ついに再建団体から脱出した。一時は、北海道の石狩市の次に苦しい自治体だったのだ。でも国は何の協力もしてくれず、特別交付金に若干の色をつけてくれるだけだった。今年もふるさと納税で498億円を集めたとはいえ、まだ1千億円の借金があるのだ。

総務省と泉佐野市の対立は激化中である。泉佐野市の主張に私は理解を示す者であるが、総務省は突出した納税額を集めた自治体にお灸を戒めのためにすえた。器量のない平等主義をしようとして、研究、努力した自治体を悪者にした総務省。これで本当に地方再生・創生なんてできるのだろうか。中央の自治体が潤う現行の税制度を少しでもふるさと納税で地方自治体にまわすようにした制度を活用した自治体がペナルティーを受けることとなった。

これでは自治体が委縮してしまう。競争させて国民がふるさと納税に興味をもっていただければ、納税額が増加する。つまり、それだけ商品が動き、景気を刺激する。納税(正確には寄付)した人は居住地の住民税が軽減されるため、大都市は軒並み税収減となった。それでよいのである。

最も減らした自治体は横浜市で136億円、名古屋市で80億円、3位は大阪市の74億円だったという。これらの自治体は税減収だったとはいえ、ダメージといわれるほどの額ではない。地方自治体が、どれだけ疲弊しているか総務省は理解しているのか。なぜ、過疎化が進むのか。金がないため魅力的な自治体を作れず、住民サービスまで金がまわらないのだ。

地方自治体は、総務省の奴隷にならず泉佐野市のように主張すべきではないか。現在の総務省の器量では、地方再生・創生は困難だ。ふるさと納税で競争させ、地方自治体に少しでも金がいくようにすべきだ。地場産品を返礼品に決め込む発想なんて古い。魅力的な産品を持つ自治体が得するのは明白だ。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」。地方自治体の反乱を期待する。政府は、本気で地方の再生・創生を考えているのだろうか。考えていないのだ。だから納税額を高めた自治体がペナルティーを受ける。泉佐野市よ、頑張れ。総務省に負けるな。‥と思っていたところ、2日なって神風が吹いた。国の第三者機関の「国地方係争委員会」が泉佐野市の主張を認めた上、30日以内に再検討結果を泉佐野市に通知するよう総務相に勧告した。これは地方再生をかけた戦争なのだ。

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