【地方再生・創生論 129】もう一度寄ってみたい「道の駅」とは 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年8月2日

 水揚げされて競り市が終わると、すぐに隣にある魚市場で売られる。新鮮かつ安価、ごった返す市場のにぎにぎしさは元気までもくれる。大阪湾近海の魚介類が、飛ぶように売れる。30軒ばかりの店々では、多様な商売を展開する。地元の客にとどまらず、数台の観光バスも立ち寄り、一見、「道の駅」に映る。

 民間の業者と漁業組合と仲買人組合とが協力して運営される魚市場、地域社会の名所となって久しい。大阪府泉佐野市にある活気みなぎる古くからの魚市場、最初は広場にテントを張り、トロ箱を並べる質素な市場だったが、人出も多くなり、府や市が協力して質素な建物を建てた。

 この泉佐野市の山手には、「コウタリーナ」という野菜中心の市場がある。地元の農家の新鮮な産品が並ぶ。安くて大人気、夕方には近隣の人たちや遠方からも押しかけ盛況だ。

 この施設も農協や民間が設置したもので、魚市場と共通しているのは第1に広い駐車場があること。第2には過剰な投資をしていないこと。第3には店舗というイメージよりも市場という印象を与えていること。両方ともに私には道の駅と思える。

 にぎわいが大切である。活力がみなぎり、客が客を呼ぶ。自治体が運営したり、資本投資したりすれば、自由奔放な商売ができない。地元の1次産業である漁業、農業に光明を与え、振興に大きな力を与えている好例を泉佐野市に見ることができる。私もよく足を運ぶが、ついつい買い過ぎてしまう。店から宅配便で、友人に特産の地域ブランド化している水ナスを贈ると喜ばれる。

 仕事の都合で、私は全国を旅する。車で道の駅を見かければ、必ず立ち寄る。その地の産物に興味があるからだ。

 感じのいい所もあれば、閑古鳥の鳴く所もあり。成功例と失敗例は一目瞭然、客足の悪い道の駅は、どうも親方・日の丸の経営に終始しているかの印象を受ける。工夫が足りず、民間活力を生かしていないかにも映る。役人が商売に口を出すシステムは、「武士の商法」よろしく失敗する。

 道の駅は、1993年に当時の建設省(現国土交通省)によって認定制度が確立し、103カ所の地域でスタートを切った。補助があるため全国の自治体が名乗りを上げ、現在では約1100カ所の道の駅が点在する。

 で、もうかっている所、失敗の所と二極化が進む。地域社会の産業を振興したり、休憩所としての役割は大きいが、「行ってみたい、寄ってみたい」という魅力的な施設になっているかどうかが問題である。

 「休憩機能」「地域産品販売・紹介」「観光情報・案内」の役割を道の駅がおびる。地元の食材を使った料理を楽しむことができれば、リピーターも増えようが、たいていは一見客ばかりと決めつけている所が多い。土産物を購入しようとしても、特徴ある品々でなければ、買いたいという欲望が湧かない。これは買い得、という品々を創る研究がなされていない所も多いのにガッカリさせられる。

 道路沿いにあるドライブインと道の駅の差別化をいかに図るか、その研究も大切である。道の駅の設置者の8割が自治体。公共事業として自治体が中心になって運営すれば、ほぼ失敗するのは、この事業は市場原理にさらされているためだ。自治体が、どこまで介入して民間活力を引き出すか、成功例は主体を民間の発想と経営力に委ねているケースが多いという。

 役人は客の心理を読めず、自治体の威信をかけて立派な高級感を漂わせる施設を造る。過大な資本投下は回収するのに苦労するばかりか、テナント料も高価になるので商店主の出店を競うこともない。泉佐野市の市場は、ただの市場。が、行ってみたいという雰囲気をつくる地場の農家の努力が充満する。

 今まで、もう一度寄ってみたいと思った道の駅は、千葉県神崎町ぐらいである。ここの商品には地域色の強いオンリーワンが、これでもか、と並べられていた。

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