【地方再生・創生論 127】日本の「トイレ革命」 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年7月19日

 私の日体大では高校を5校も併設している。教員養成目的の大学であったがため、教育実習校が必要だったのである。中学も2校、そして幼稚園も併設している。経営は、おかげさまで順調、理事長として安堵の胸をなで下ろしている。とはいえ、少子化の波の勢いは強し、あらゆる面で気をつかう日々である。

 この夏休み、女子生徒を受け入れている併設校のトイレ工事が集中した。支出も馬鹿にならないため、担当者から詳細な説明を聴取する。「和式トイレだと生徒が他校を選択する傾向にありますので、すべて洋式トイレにする必要があるのです」。私は、二の句を継げず、時代の流れを意識せねばならなかった。進学先をトイレの様式で決定されるとは、しかもウォシュレットでなければダメだという。

 先進国と発展途上国との区別は、悪臭をいかに追放しているかにあり、保健衛生上、問題があるかどうかが物差しとなる。で、その国の公衆トイレが、すべてを物語る。日本の公衆トイレ、特に高速道路のパーキングエリアのトイレは世界一、面目躍如たるものがあろう。コンビニだってトイレを売り物にしていて、多くの人たちを救ってくれている。

 やはり洋式の方が便利である。人間の消費エネルギーを少しでも減らしてくれる便利さだが、一方で己の体力を知らず知らずのうちに衰えさせてもいる。和式トイレは、足腰を強くしてくれるばかりか、毎朝、アキレス腱を伸ばすストレッチ運動になっていた。だから、日本人はそれほどアキレス腱を切ることはなかった。朝から準備運動をしていたわけだ。

 米国の大学に留学した際、松葉づえ姿の学生の多さに驚いたことがある。すべからくアキレス腱の切断裂、異常に映った記憶が強くある。で、アスリートたちは、練習前、トレーナー室に行き、アキレス腱、膝にケガ予防のためにテーピングをしてもらう。日本人の私には、そんな習慣がなかったので、トレーナー室に行かないと、コーチからこっぴどく叱られた。

 1980年、イランでイスラム革命が起こった。首都テヘランの一流ホテルであるヒルトン、シェラトン等のトイレは、すべて洋式から和式に似たイラン式に転じさせたのには閉口した。イスラム革命とは、そこまでやるのかとショックを受けた思い出がある。イランやトルコのトイレは和式同様であり、日々、トイレで足腰の強化をしているせいでか、レスリングや格闘技は強い。

 タタミ生活と和式トイレは、日本人の体力強化に想像できぬほど役立っていたのに、ついに私たちも洋式派に転じてしまった。考えれば、和式トイレにいったんかがむと立ち上がるのが難行となって久しい。両手で左右の何かつかまる物につかまらねばならないほど弱くなってしまった。情けない話である。

 日本人は、あたかも清潔症患者、きれいなトイレでなければ排泄できない人種へと変化し、洋式でしかもウォシュレットでないと認めない。まさにトイレ革命といえるのだが、地方にあってもこの傾向は同じである。まず公衆トイレを美しくする。そして公的機関のトイレは洋式、ウォシュレットの近代的なものへと工事を急がねばならない時代だ。

 中国の地方を旅して、トイレで泣かされた人、あの不潔さに中国嫌いになったに違いない。イスラム諸国を旅行すれば、和式同様のトイレに苦痛を覚えたに違いない。いまやトイレの国際標準は洋式であるといえる。ただ、ウォシュレットこそは、日本が誇る技術と文化のたまものといえようか。

 たかがトイレ、されど毎日の大切なプライベートルームであるがゆえ、公的施設のみならず、大切な空間である。どれだけきれいにするか、その配慮はその組織のすべてを物語ることを知っておかねばならない。役所を訪問すれば、まずトイレに行くがいい。その感想こそがその役所のすべてが判(わか)る材料となろう。中高生の多くは、特に女生徒はトイレで進学先を決定する時代、私たちの脳ではついては行けない感じがする。

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