【地方再生・創生論 126】マスコミの「ゆるキャラ」批判に答える 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年7月12日

 日体大のシンボルマスコットは、ライオンである。明治期からの寮歌に「世に魁(さきがけ)て獅子(しし)吼(く)する」とあり、百獣の王ライオンがほえているように鼓舞させる一節からライオンに決定したという。また、大正時代初頭からの伝統である応援運動の「エッサッサ」は、獅子吼する様を表現している。で、日体大キャンパスのあちこちにライオン像が建つ。とりわけ、有名なのは世田谷校舎玄関横に鎮座する三越百貨店から寄贈された、あの有名な三越ライオンだ。またがれば願いがかなうという言い伝えから、またがれるようにしてある。日体大のパワースポットの一つ。

 次にすごいライオン像は、文化勲章受章者であられた北村西望作の大きな「密林の王者」であろう。国際自動車(kmタクシー)から寄贈されたもので、その迫力におののく。売店に行けば、ライオン人形やTシャツ、ユニフォームのライオンがプリントされたさまざまなグッズが売られている。これらキャラクター商品の販売も大きく、大学のイメージアップと存在感にも寄与してくれている。

 熊本空港に降りると、どこもかしこも「くまモン」一色、熊本県のPRキャラクターの活躍ぶり、人気の高さに驚かされる。あらゆる土産品に「くまモン」が登場し、熊本のシンボルなのだと教えられる。いわゆる「ゆるキャラ」の大成功例の見本で、どの自治体も2匹目、3匹目のドジョウよろしく必死になるのが理解できる。

 で、私も顧問を務める出身地の泉佐野市のゆるキャラ作りに一肌脱ぐこととなった。漫画「キン肉マン」の作者である知人のゆでたまご氏に協力を仰いで「イヌナキン」という作品を作っていただいた。

 イヌナキンの説明をする紙幅をもたないが、このゆるキャラは地元では人気を博している。本当は、これだけでも大成功だと思うが、どの自治体も己のゆるキャラを全国的に有名にして、くまモンに追いつこうと汗を流すこととなる。

 「ゆるキャラグランプリ2018in花園」は、異常なほどの盛り上がりを見せた。いや、いくつかの自治体が、自治体ぐるみで組織的に投票したと批判された。市長の指示によって票獲得作戦を練ったりして、マスコミは大きく報じ、識者らしき人たちは紙面で「地域のイメージを打ち出す点で役割を果たしたゆるキャラだが、役割を終えつつある」と述べる。

 NHKテレビでもゆるキャラの特集を組み、批判された四日市市、大牟田市、泉佐野市の実情を紹介していた。投票ルールが明確にされておらず、組織票に対する批判に私は首をひねった。これほど金のかからない「町おこし」があるだろうか。郷土心をあおる効果的な運動だと思ったが、すぐにブレーキをかける人たちが登場する。

 結局、自治体や企業のキャラクター507体から日本一の座についた「ゆるキャラグランプリ」のご当地部門、わずか職員5人の埼玉県志木文化スポーツ振興公社の「かパル」が優勝した。実行委員会は、組織票を認めず削除した結果、トップを走っていた四日市市の「こにゅうどうくん」は3位へと転落した。が、順位はともかく、幾度もメディアで取り上げられたため、かパルよりも有名になった。
この種のコンテストで頑張る自治体を批判するメディアは、何が気に入らないのだろうか。自治体が必死になって売り込もうとする姿勢を評価せず、地域社会の自主性の芽を刈るのはいただけない。
昔から日本社会には、「野暮競」とか「無枠競」と呼称された、くだらないランキングを作って楽しむ習慣があり、江戸庶民が楽しんできたのだ。まさにゆるキャラグランプリは、その現代版、めくじらを立てるほどのものではあるまい。

 来年からは、組織票を認めるルールにして各自治体を競わせてはどうだろうか。それを嫌って、わが道を歩む自治体も出現して個性化が進むかもしれない。日体大のライオンは、ちっとも有名ではないが、大学全体の団結心を育んでくれている。

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