【地方再生・創生論 119】個人の住宅は個人で守る 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年5月24日

 台風24号で、わが家のサンルームの屋根であるガラスが、ふっ飛んだ。強い風で近くの家の杉の大木が折れたり、被害が多かった。が、23号の被害は甚大で、関西国際空港は想定外のタンカー事故で連絡橋が壊れた。大阪湾の高潮は空港をマヒさせたにとどまらず、強風は民家の屋根瓦を飛ばし、電柱をなぎ倒した。

 東南海・南海地震対策で、関空は高潮や津波に備えて工事をしていたが、焼け石に水だった。津波対策を説き、工事の必要性を国会で求めた私にすれば、自然の力のすごさを痛感するしかなかった。電柱が倒れたため停電による被害もあり、信号機が止まったため交通事故も招来させた。自然災害に脅えねばならない日常は、「災害は忘れた頃にやってくる」という寺田寅彦の言葉を否定するものだ。

 23号、24号の台風は、新しい事象を私たちに突きつけてきた。台風は高潮を呼び、その波が強風で遠くまで飛ぶ。で、電線や碍子(がいし)を塩水で濡らす。やがて塩がたまり、雷やちょっとした摩擦で発火して火事となる。停電の原因ともなった。新種の火災で右往左往させられたニュースに驚かされたが、電気を絶縁するために使う陶磁器の碍子までもが燃えるなんて、電力会社も予想していなかったに違いない。

 海岸の近くにある電柱は危険だと分かった。日本列島は四面海に囲まれているのだから、海岸にほど近い地域は、塩水によって火災を招く可能性があると教えられたわけだ。このための対策をどうするのだろうか。各自治体は、海岸をもつとしたなら考えねばならなくなったのである。

 地震がある。台風がやって来る。想定外の集中豪雨がある。自然災害のデパートに私たちが住んでいる。私の恐れるのは、どの家にも火災の要因となり得る危険物が山ほどあることだ。爆発だって起こり得る。自治体は消防署をはじめ消防団を持ってはいるが、被害を最少で食い止めることに越したことはなかろう。公共の建物には消火器が備えられているのは一般的だが、この発想を個人の住宅にまで広めねばならなくなってはいまいか。

 「安全な町」「安心できる町」をつくるためには、まず個人の住宅を守るという発想が求められる。簡便な消火器が開発されている。それらを配布し、己の家の火災は己たちで消火するという意識を植えつけるべきだ。そんな一歩進んだ自治体の出現を強く要望する。ケネディの言葉を想起するがいい。「国に何をしてもらうかよりも、国に何ができるか」。

 ふるさと納税の使い方は、自治体によって異なる。返礼品に情熱を傾ける自治体は多いが、「安心できる町」づくりのために使わせていただきますとうたう自治体を私は知らない。住宅火事は、隣家にも迷惑を及ぼす。しかも、生命を奪う危険性も高い。火の小さい時に自力で消す。つまり初動消防こそが大切なのだ。

 日本人は保険好きである。消火器を買わないくせ、火災保険に加入する。自らが消火する意識を持たず、消火後の保証について考える国民らしい。自治体は、個人の住宅については課税することしか考えず、ゴミの処理や健康診療等のサービスは行うにつけ、住宅の安全については考慮しないでいる。

 個人の責任、プライバシーに自治体は立ち入らず、干渉しないことが民主的であると決めつけてきたが、自然災害の多様性と頻度は、新しい自治体の発想が過去と同様であってはならないと説いている。消火器や簡易トイレ等を配布し、あらゆる災害に備える自治体があってしかるべきであろう。

 ともあれ、信じがたいことが起きる。あらゆる面で想定できるものがない不確実な時代に私たちは生きている。そのためのサービスも自治体は考える必要がある。「備えあれば憂いなし」、自治体は住民の安全をとことん考えるべし。それが自治体にとって、最大の保険なのである。懐中電灯、携帯ラジオ、そして消火器が災害時の三種の神器であろう。物があれば行動が伴う。住民を能動的に転じさせてほしいと願う。

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