【地方再生・創生論 118】街からガソリンスタンドが消える 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年5月16日

 私たちが子供だった頃、結婚する際、相手の街に行って「聞き合わせ」をした。相手やその家族の情報を得るための習慣だった。酒屋さんに入って聞く。タバコ屋のオバさんに聞く。寺に行って住職からも聞く。結婚は「家」と「家」のものだった時代には、家の釣り合いが重視されていた。そんな世の中だったのである。

 街の入り口か出口は、たいていはガソリン屋さんだった。街の様子や住民のこと、道順等も親切にガソリンスタンドのオジさんが教えてくれた。その街の情報や知識に詳しい人が、あちこちにいたのだが、昨今、酒屋さんも、米屋さんも、タバコ屋さんもなくなってしまい、街の情報通が不在となってしまった。
 
 街、地域から消えた商売は数多くあるにつけ、1日中、その街で生活している人が少なくなり、落語の世界と全く違う日本国に変化してしまった。自動車や交通機関の発達は、街の形までも変えてしまった。また、大型店舗の出現で、街の商店は店を閉めた。

 最近、私がいつも給油するスタンドに貼り紙があり、「閉店します」とある。洗車をはじめ、オイル交換、タイヤの空気調節、給油のたびに愛車の手入れ場として利用させていただいていたのに残念。そんなに近所にスタンドがないから、給油先探しにまごつくことになりそうだ。また、客と店員の関係を1から始めねばならない。常連客としての特権もなし。

 街の商店が消えただけでなく、ガソリンスタンドもめっきり少なくなってしまった。寒くなると灯油を買って石油ストーブに火を入れなければならないのに、これからどこで買うかも決めねばならない。なじみのスタンドが廃業とは困ったものだ。あれだけ多くの客を抱えていたスタンドなのに閉店だという。

 国内のガソリンスタンドは、この四半世紀で半減したそうで、6万軒を超えていたのに現在では3万軒だ。廃業は年に1千軒のペースで進み、スタンドを利用する人なら、消え行くスタンドを体験したに違いない。

 あまり気付かなかったが、若者が車に興味をもたず、マイカー離れの人が増えていると耳にする。で、ガソリン需要が落ち込んでいるそうだ。そこかしこも渋滞で、車だらけという感じもするが、ガソリンが売れないために廃業に追い込まれるのだ。そこへ、老朽化した地下タンクの改修が義務付けられたため、泣き泣き経営を断念する経営者も多いらしい。

 街や地域からガソリンスタンドが消える。残るスタンドは大企業直営店が多く、個人経営では難しい様子。街の事情通のガソリン屋さんは、悲しいことに壊滅状態に追いやられている。時代の流れとはいえ、小さい町では1軒のガソリンスタンドもない社会である。

 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)が一般的となれば、ますますガソリンは売れなくなろうか。EVのスタンドはコンビニかパーキングに設置され、石油ストーブもアンティークになるかもしれない。セルフのスタンドが増え、店員と会話することがなくなった。人件費が高いためか、無人のスタンドも多い。

 米国留学時、私はガソリンスタンドでアルバイトをした。それほど英会話ができなくとも、外国人でも務まるアルバイトだった。窓を拭くサービスをするとチップをくれる客、けっこう楽しかった。

 ガソリンスタンドの話を書いたのは、これだけスタンドが消えてしまえば困る人たちも出てくると思われるからだ。「聞き合わせ」のためではない。離島や山間部、給油拠点がなければ困るに違いない。この拠点を各自治体は、どのように考えているのだろうか。あの東日本大震災の折、数時間も並んで給油したことを忘れやしない。

 ガソリンや灯油は、食料と同じで、なくては困る。生活必需品であるがゆえ、役所も心配せねばならない事象である。都市部はいいかもしれぬが、地方へ行けば行くほど困る。

 ガソリンスタンドによって、私たちの生活が支えられていた事実を、自治体はどう考えるのか。

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