【地方再生・創生論 110】「ふるさと納税」で闘う泉佐野市 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年3月7日

 「ふるさと納税」を政府は、なぜ企画したのか。地方にふるさとに元気を与えようとするヒット政策、地方自治体はアイデアを創造する能力を求められるようになった。政府は、どの自治体も平等に納税されると考えていたのだろうか。アイデアを創造する能力のコンテストなのだから、当然、勝ち組と負け組の自治体とに分かれる。

 で、政府は勝ち組に対して苦言を呈する。アイデアや創造力を評価することなく、納税額が多額になれば、その自治体に文句をつける。ふるさと納税は、最初から競争であった。

 それを容認したのは政府である。この納税制度を盛り上げるために返礼品を認めたからに他ならない。各自治体は、この返礼品を研究し、工夫に工夫を重ねる。

 返礼品を納税額(寄付額)の3割以下の地場産品に限る、というルールを政府は提示した。しかし、地場産品のない自治体もあれば、地場産品の定義づけも困難だ。産品の部品を作ればどう評価されるのか、農産物の肥料や農薬を作る会社の存在は、どう評価するのか。一自治体の地場産品なる表現は、あまりにも曖昧模糊(もこ)であり、厳密さに欠ける。

 その隙間をぬって、各自治体は中央官僚の考えられぬ返礼品の数々を納税者に提供することとなる。地方の自治体にとってふるさと納税の制度をいかに活用するかが自治体の能力、返礼品の研究に本気になるのは自然の成り行きであった。

 そしてついに、政府は急ブレーキを踏むこととなる。勝ち組が圧倒的な集金力を発揮したからである。

 私自身が特別顧問を務める大阪府泉佐野市は、一昨年、135億3300万円を集め、18年度は360億円を集めようとする勢いだ。泉佐野市が北海道の夕張市に次いで大きな赤字を抱える自治体で、どれだけ千代松大耕市長が苦しみ、非情とも思える政策で市政を再建してきたか。こんな体験をした市長、市職員、市議会は日本全国どこにもなかった。だからこそ、ふるさと納税制度の活用に必死にならざるを得なかった。

 泉佐野市は関西国際空港建設に先頭に立って協力した自治体で、その付帯施設や国際化のために大きな借金をせねばならなかった。国に協力したが、関空が今日のごとく輝く状況でなかったため、投資が市を苦しめることとなった。千代松市長の誕生は、その負の遺産を消失させる政策からスタートを切る。

 かかる泉佐野市の苦労を近くの海南市長であった石田真敏総務相が、どの大臣よりもよく識(し)っているはずだ。関空の使用だって多い政治家である。

 その石田大臣が泉佐野市を批判した。「制度の根幹を揺るがし、存続を危ぶませる」と名指しで記者会見で語った。

 石田大臣は市長経験者ゆえ、前大臣の野田聖子衆議院議員とは異なる発言をすると期待したが裏切られた。官僚の作文を読むだけの大臣だったとは寂しい。地方活性化に冷や水を浴びせる考え方は、都市部との格差を是認するだけでしかないではないか。

 千代松市長は、「法令は守るがスタイルは貫く」と主張している。返礼品に加え、インターネット通販大手であるアマゾンのギフト券を最大で納税額の20%分を提供する「100億円還元キャンペーン」を始めた泉佐野市。私も驚いたが、この刺激的キャンペーンには総務省も腰を抜かしたに違いない。想定外だったのだろうが、腰を抜かして泉佐野市を批判するようでは、官僚と総務省が泉佐野市に敗北宣言をしたに等しい。

 地方自治体の個性を封じて、眼目である地方創生、再生なんてできるのだろうか。自治体は政府の優等生であっても、何も得をしないばかりか助けてもくれない。特別交付金に少し色を付けてくれる程度だ。

 国とケンカする気概を持たない自治体は栄えない。泉佐野市長を警察は逮捕することはない。犯罪でないのだからふるさと納税制度を活用すべし。

 首長よ、国と闘う心意気なくして住民の代表と言えるか。

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