前回、植物性食品を中心に食べるが、時には肉や魚も食べる「フレキシタリアン」について書かせていただいた。英語で「柔軟」を意味するフレキシブルとベジタリアンを合わせた、1992年初出の比較的新しい造語だ。2003年には米国の流行語大賞で、便利な言葉部門に選出され広まった。
日本では「ゆるベジ」「脱力系ベジタリアン」とも呼ばれる。頑張りすぎない菜食主義者というニュアンス。ベジタリアンにも近年いろいろなタイプがあり、種類も多く分かりにくい。ここでちょっと、まとめておきたい。
菜食主義つまりベジタリアンとは、動物性食品を摂取しない人の総称で、程度によって呼び方が異なる。動物性食品を一切排除する完全菜食の人を「ヴィーガン」と呼ぶ。肉や魚介類はもちろんのこと、牛乳やバター・チーズなどの乳製品、卵や蜂蜜も口にしない。
ヴィーガンも二つに分かれる。「可能な限り動物から搾取しない」という主義、「ヴィーガニズム」に基づくライフスタイルの人を「エシカル・ヴィーガン」と呼ぶ。食品だけでなく、動物由来の革製品やウール、シルクなどの衣類、動物実験を行っている化粧品などもNG。製造に有精卵を使うインフルエンザ用ワクチンも拒むそうだ。
一方、食事のみを制限する人は「ダイエタリー・ヴィーガン」と呼ばれる。英語のdietには「日常の食べ物、食生活、食習慣」という意味もある。衣類などは、動物由来でも問題ない。
他にどんな菜食主義があるのか? 乳製品は許容する「ラクト・ベジタリアン」。乳製品と卵も食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」。ヴィーガンの中でも、植物の果実のみ食すのが「フルータリアン」で、収穫により植物の命を絶ってしまう物は食べない。
国際ベジタリアン連合は認めていないが、次のような種別もある。鶏肉と卵は良しとする「ポーヨー・ベジタリアン」、魚介類はOKという「ペスクタリアン」。また、菜食中心でたまに鶏肉や魚、乳製品、卵を食すが、畜肉は食べないという「セミ・ベジタリアン」など、多種多様である。
かつて菜食主義はほとんど宗教上の理由だった。不殺生に厳しく、微生物を吸い込まぬよう白い布で口を覆うジャイナ教徒のように、特殊な印象もあった。日本でも、仏教の伝来で殺生を戒める考えが広まり、肉食がタブーとなった。寺院で発展した精進料理は、今で言えばヴィーガンだ。だが現代のベジタリアンは、その多様性のごとく、理由も健康上の問題や美容、環境問題解決、脱動物搾取などさまざま。代替肉の充実などもあり、数も増えている。
コロナ禍が収まりインバウンドが復活したら、菜食主義者が多数来日するだろう。ヴィーガンに食事を提供する場合、カツオなど動物性のだしや、動物の皮膚などから抽出したゼラチンも要注意。だが先述の通り敷居の低いタイプもあり、動物や地球だけでなく体にも優しい食習慣だ。筆者は「週1ベジ」を始めた。おいしく楽しくLet’s try♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。