最近、グラタンに凝っている。寒い時期に熱々のグラタンをハフハフしながら食べると、何だかとってもシアワセな気分になる。
以前「ニッポン生まれの洋食・ドリア」にも書かせていただいたが、グラタンとはフランス語で「ひっかく」という意味の「gratter」が語源。失敗したオーブン料理のおこげが予想外に美味で、かき取って食べたことに由来するそうだ。表面に焦げ目をつける調理法と、出来上がった料理そのものを「Le gratin」と呼ぶ。
日本でグラタンといえば、ベシャメルソースのマカロニグラタンをイメージする人が多いと思うが、そうとは限らないのだ。トマトソースやミートソースもアリ。オニオングラタンスープも、門司港(もじこう)名物「焼きカレー」だってグラタンだ。フルーツにカスタードソースをかけて焼けば、デザートにピッタリのフルーツ・グラタンになる。
フランス、サヴォワ・ドーフィネ地方が発祥とされるグラタン。同じくこの地で誕生した郷土料理「グラタン・ドフィノワーズ」、略してドフィノワも、筆者の大好物。コチラも以前ご紹介したが、要するにジャガイモのグラタンだ。でも、ベシャメルソースは使わず、牛乳と生クリームにジャガイモのデンプンでとろみをつけるだけなので、調理は至って楽チンだ。
ベシャメルソースのグラタンはとっても魅力的なんだけど、作るのがちょっぴり面倒。古典的フランス料理の四大ソースの一つだが、今や調理法も千差万別。バターと小麦粉を炒めるのは共通だが、牛乳を一気に入れる派、少しずつ入れる派、牛乳の温度も冷たいままか、温めるかなどさまざま。ダマにならないよう、泡立て器で混ぜる人もいれば、レンチンだけで作っちゃう人もいる。さらには、フレンチでとろみづけに使う、バターと小麦粉を練ったブールマニエを牛乳に入れる作り方まである。
筆者は、ここぞと気合を入れるときしかベシャメルソースは作らない。いつもはもっと簡単な「なんちゃって方式」。タマネギは必須で、鶏肉など他の具材と共にバターで炒めたら、小麦粉を振り入れて粉っぽさがなくなるまでさらに炒め、そこに牛乳を加えれば、とろみの付いたベシャメルっぽいホワイトソースに早変わり! 近頃早ゆでタイプのマカロニもあるので、牛乳と一緒に投入しちゃえば、わざわざゆでる必要もない。お鍋から耐熱容器に移し替え、チーズを載せてオーブンで焼けば、時短簡単でも立派なマカロニグラタンの出来上がり!
先日、タマネギとシメジでなんちゃってベシャメルを作った。他に何を入れようか…?と考えた挙句、ゆでたブロッコリーと半熟卵を入れてみた。きっちり6分ゆでて氷水でよく冷やした卵は、熱々のソースの中でも固まらず、フォークを入れると黄身がトロリとあふれ出す。あぁ口福♪
冷蔵庫の余った食材でも、何でも具材にできるグラタン。実は気さくな家庭料理で、バリエーションも無限大。また作ろうっと!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。