【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み49】ウイルスとは何なのか?今回、我々は何を学んだのか。 北村剛史

  • 2021年5月4日

北村

北村氏

 新型コロナウイルス感染症が日本で昨年1月に発覚して以来、2021年4月26日時点において累計の感染者数で57万人を超え、死者数は1万人を超えました。当該ウイルスが有する遺伝子は29,903個という膨大なアミノ酸の構成物質である塩基を連ねて構成されるRNAです。遺伝子とタンパク質でできた不思議な存在であるウイルスの存在は、ホモ・サピエンスが地球上に出現した約20万年より遥か昔、30億年まで遡ることができます。ウイルスは、近年高機能顕微鏡の発明とともに発見され、ラテン語の「毒汁」を意味するvirusと命名されましたが、実は基本的には、ウイルスが自らを寄生して増殖することができる生物との関係で互恵的な共生を演出しつつ進化を続けており、現在でも地球上に無数の未知のウイルスが存在しているのです。つまり20万年前から変わらず、生物とそれに寄生しつつ進化するウイルスは、その大半が共生関係を維持しつつ、自然生態系のバランスの中で安定化してきたのです。ウイルスの進化は、今回の新型コロナウイルスの変異の激しさからもうかがい知れるように、相当に早く、それとの共生を維持する上で、地球上の生命生物も進化してきたと言えるのです。そのような環境の中、今回のパンデミックを通じて我々はどのような知識を得たのでしょうか。

 一つには、ウイルスの脅威を、身をもって感じたと言えます。現時点では、人類の英知と一進一退、あるいは社会的には敗北感すら感じさせる状況に追い詰められています。ゼロウイルス、ウイルスに打ち勝つ管理の徹底等の論調が多く見られますが、上記のとおりそもそもウイルスと共存することで、様々な生命生物は同様に長らく進化の過程を経て現在を生きているのです。そもそも、そのウイルスを撲滅し完全勝利するという考えが荒唐無稽にすら感じられます。であるからこそ、そのような環境の中我々観光宿泊業界を健全に再度成長軌道に乗せるために必要な視点を、今こそ再度確認しておく必要があります。現在でも大半のウイルスとその他生物との良好な関係は存在しているのです。例えば「赤潮」はウイルスが治癒しつつ栄養源として生物に還元していますし、人類にとっても子孫を残す重要な基盤である胎盤は、レトロウイルスがあって、現在の機能を獲得したとも報告されているのです。ウイルスにとっても生物を絶滅してしまうと、寄生先がなくなり自らも絶命の運命を辿ることになります。したがってできうる限り互恵関係を築いているのです。

 そのようなウイルスがなぜ、人類にとってこれほどまでに脅威になったのでしょう。突発的に脅威となったウイルスをエマージングウイルスと言います。もちろん、今回の新型コロナウイルも該当します。今回の新型コロナウイルスは、相同性、つまり由来、起源的にはコウモリと言われています(キクガシラコウモリ)。ただ、人間と接続する分子レベルの部位は、他の中間宿主(しゅくしゅ)が有力視されています。コウモリとの関係で安定的互恵関係を築いてきたウイルスが、突然、他の動物に感染したということです。生物多様性がこれまで通り豊富な生物生態系であれば、容易にそのようなことは起こらないはずです。人間による経済合理性優先の社会経済活動、グローバリゼーション、自然破壊、動植物の乱獲や無意味な接触が、これまでの生物多様性を傷つけ、その結果、現在我々が直面している未曾有のパンデミックに繋がっていると考えられます。

 なぜ、コウモリなのでしょう。様々な説がありますが、そもそもコウモリの細胞免疫力の高さを背景にウイルスが長らく進化を続けていたことも一因と言われています。もちろん今回の新型コロナウイルスの由来は今後の分析研究を待つしかありませんが、いずれにせよ、2020年にパンデミックが起こらなかったとしても、いつ起こってもおかしくない状況であったことは間違いありません。「生物生態系」と「生物多様性」、このキーワードこそが、今後経済活動をサステナブルに且つ成長に再度引き上げるために、非常に重要なワードとなるはずです。つまり、人類による経済活動と「生物生態系」や「生物多様性」とのゾーニング、つまり棲み分けを綿密に計画し実現することで改めて再成長シナリオがイメージできるようになるのです。

 感染症拡大防止対策は、そこに辿り着くまでの一部分の断片にすぎません。もちろん今は徹底的にできうる限りの感染症防御を実践すべきです。ただ、それだけではサステナブルではないのです。今後、自然生態系を最大限に尊重すること、生物多様性を必死に守る姿勢ことが、感染防止対策の次に我々が本気で取り組まなければならないことを、今回を契機に我々は学んだはずです。地球上で約100万種の生物が絶滅の危機にあるようです。なんと地球上の動植物生命の約1/4に相当すると言われています。喫緊の課題としては、感染症拡大防止対策の徹底の要諦を、今後の備えとしても構築し、我々観光宿泊業界が防波堤となり、地域の安全拠点として機能する必要があります。地域のバックアップなくして、観光再来はありえません。それと並行して、今後生物生態系と生物多様性に意識を寄せて日々の運営を行うことが自然界から求められているのです。

 そのような前提条件を置いて、今後求められる感染症対策に触れてみたいと思います。宿泊施設は、地域を基点とした場合、その「外」と地域の「内」の中間にあるゲートです。つまり、徹底した安全対策があって初めて地域の信任を得ることができ、且つ高度な知識を輪として広げることが唯一、地域内で実現できる存在でもあるはずです。人類に与えられた武器、それは「知識」です。知識を少しずつ施設内で広め、それを地域に波及させることが求められているのです。

 今回のパンデミックで得たことを後世に伝える義務が我々にはあります。ウイルスは、地球を繁栄させるために送り出されてきた、生命とは異なる特殊な不思議な存在です。なんせ神経細胞がありません。意思がないのです。ただ、雪の結晶や自然界で見られる「自己組織化」を繰り返しています。多くの塩基が宿主細胞と協働で自らの遺伝子を複製しています。今回の新型コロナウイルスでは、26の機能性タンパク質をコードした遺伝子(RNA)を持ち、そのうち16か所が、非構造タンパク質でありウイルスRNAの複製を担っています。我々の細胞質に入ると、まず自らの遺伝子を複製する酵素が宿主細胞により即座に作成されます。その酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ;RdRpと言う。)がRNA及び復元に必要なたんぱく質の鋳型を合成し、ヒトの細胞質内にあるタンパク質合成システムを利用して、自身を復元することで増殖しているのです。RdRpを阻害するのがアビガンでありレムデシビルです。

 今回の新型コロナウイルスは、人に接続して感染するエントランスは、複数あり、それが感染力の高さに繋がっています(代表的なものはアンジオテンシン変換酵素;ACE2受容体と言う。)。感染経路では飛沫感染、接触感染、環境によってはエアロゾル感染、噴口感染が懸念されます。宿主細胞から出る際に、細胞質を奪います。つまり、エタノールによる細胞質の溶解作用と分子式から見て取れる表面張力の低さから揮発性が高いことが高い効果に繋がっているのです。次亜塩素酸では、電離分解後、電子的に中性である次亜塩素酸(HOCL)がウイルス内部に入りウイルスの電子を奪い酸化させます。界面活性剤は、エタノールと同じく親水性と疎水性を併せ持っており、ウイルス細胞膜を分解します。飛沫感染ではマスクは重要ですが、ウイルスの接着面が多い部位が唾液腺、歯肉、鼻腔上皮質に目の周りです。それらを防御しましょう。特に鼻呼吸は鼻毛や粘膜等人体に備わったマスクとも言えます。オゾンや紫外線、光触媒に強力な酸化力あるOH系空気清浄機等、様々な武器を、その消毒メカニズムを把握して適切に利用する必要があります。まずは、エタノールや次亜塩素酸、界面活性剤の消毒メカニズムを正確に知りましょう。間違った取り組みを防げます。そして、生物生態系を尊重することの意義を再確認しつつ、今回の危機を観光宿泊業界が一丸となって克服しましょう。改めて、我々の最大の武器は、「知識」しかないのです。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

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