JR東日本が、東北新幹線の最高速度を上げる取り組みを開始しました。まず、盛岡―新青森間で最高速度を現行の時速260キロから320キロに引き上げます。同区間は「整備新幹線」のため、これまで法令により最高時速は260キロと定められてきました。その基準を初めて破るわけで、画期的です。
同じく整備新幹線として建設中の北海道新幹線・新函館北斗―札幌間も、最高時速を当初計画の260キロから320キロに引き上げる方針が固まりました。
さらに、JR東日本では、最高時速360キロで走る新型車両も開発中で、実現すれば、全体の最高時速320キロが360キロに引き上げられます。
こうした施策により、30年度の北海道新幹線札幌開業時には、津軽海峡区間を除く宇都宮―札幌間で時速360キロ運転が実現する可能性が高いです。その場合、東京―札幌間が約4時間半で結ばれます。
鉄道が対航空機で優位に立つという「4時間の壁」は破れないものの、4時間半ならば、飛行機ではなく新幹線を使うという人も増えるでしょう。とくに、羽田空港から遠い関東地方北部の人にとって、北海道旅行は新幹線が便利になります。
観光的に注目したいのは、ニセコです。北海道新幹線が札幌まで延伸すると、ニセコの玄関口である倶知安に駅ができ、東京―倶知安が約4時間10分で結ばれるからです。
言うまでもなく、ニセコは日本を代表するスノーリゾート。しかし、近隣に空港がないため、現状の交通アクセスは不便です。東京都心から飛行機とバスを乗り継いで6~7時間かかります。移動で1日を費やしてしまうのです。それが新幹線なら半日で移動できます。
東京―札幌では、新幹線ができても飛行機より早く着けるようになりませんが、東京―ニセコでは劇的な時短が起こるわけです。世界屈指のスノーリゾートへ東京駅から4時間余りとなれば、訪れる人が増えるでしょう。
新幹線建設には巨費がかかり、無駄と批判する声もあります。しかし、開業した地域では、観光客が増えて、大きな経済効果があるのは確かです。近隣に空港がないニセコをはじめとした後志地域では、その効果は絶大になるでしょう。
旅行者の視点でも、時速360キロの新幹線で北海道への旅ができるというのは楽しみです。あと10年。いまから待ち遠しい。
(旅行総合研究所タビリス代表)