沖縄での渋滞にうんざりした経験のある方は多いでしょう。那覇市内でも郊外でも渋滞が起こりやすく、予定通りに移動できないことがよくあります。
そこで検討されているのが、沖縄縦貫鉄道です。沖縄県は2018年に那覇―名護間の鉄軌道の計画書をまとめていて、内閣府も2012年から糸満―名護間で毎年調査を行っています。
どちらのルート案もおおむね同じで、那覇から宜野湾、うるま、恩納を経て名護に至るというもの。那覇・名護間を60分程度で結ぶことを目標にしています。
那覇・名護間は約70キロメートルなので、つくばエクスプレスのような最新式の鉄道を走らせられれば、所要時間60分を実現するのは容易です。しかし、沖縄本島の人口規模で、つくばエクスプレスの仕様はオーバースペックです。
理想は時速100キロ程度を出せる中量輸送システムです。内閣府の調査では、これまでに高速新交通システムやHSST(磁気浮上式鉄道)などを候補に挙げてきました。しかし、どのシステムでも費用対効果や収支採算性が悪く、鉄道新線を建設する場合の基準を満たせません。
そこで、最新調査では新たな候補が登場しました。京阪800系をベースにした小型鉄道です。京阪京津線と京都市営地下鉄東西線で使用されている車両で、急勾配に強く、地下鉄としても路面電車としても使える万能型車両です。
この車両に高速性能を付与すれば怖いものなしですし、「京都の車両が沖縄を走る」と話題性も十分です。ただ、車両の製造費がきわめて高く「新幹線に匹敵する高額車両」としても知られています。本当に導入するとなると、「そんな高い車両にしなくても…」、という意見が噴出するかもしれません。
実際のところ、小型鉄道でも費用対効果や採算性などの基準を満たせないので、実際に導入される可能性は小さそうです。というよりも、沖縄縦貫鉄道計画そのものが、いつまでたっても構想段階で、実現へ向けてなかなか進んでいきません。
戦前の沖縄には鉄道があり、那覇を中心に3路線を有していました。戦後、復活することはありませんでしたが、現状の那覇の道路状況を見ると、鉄軌道の整備は焦眉の急にも思えます。
いつまでも計画ばかり立てていないで、そろそろ整備に向け、動きだしてもいいのではないでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)