【テツ旅、バス旅 16】幻の京急油壷駅とマリンパーク 旅行総合研究所タビリス代表 鎌倉 淳


 品川駅から快特電車で1時間余。京急線の終点は三崎口駅です。ただ、線路は少し先まで伸びていて、国道の陸橋をくぐった先で途切れています。約2キロ先の油壺駅まで延伸計画があったためです。

 筆者の記憶では、かつては、京急線車内の路線図に、油壺駅までの計画線が点線で記されていました。しかし、延伸はなかなか実現せず、いつの間にか、路線図の点線も消されてしまいました。

 京急は2005年に延伸のための免許を廃止し、2016年には計画そのものの凍結を発表しています。人口減少が進む将来に延伸計画が復活する見通しはなく、事実上頓挫したといっていいでしょう。京急油壺駅の予定地から西に1キロ半の場所に、京急油壺マリンパークがあります。開業は1968年。京急線の油壺延伸を見込んで作られた観光施設で、「大海洋劇場」で開かれるイルカ・アシカのパフォーマンスが売り物です。しかし、近年は施設全体が老朽化。京急は今年9月限りでの閉館を発表しました。

 筆者は近年、油壺マリンパークを何回か訪れたことがあります。広々とした敷地に展示施設が点在していて、「パーク」の名に恥じない公園のような水族館でした。高度成長期を思い出させる建物には昭和感があふれていて、懐かしさも感じられます。しかし、施設全体の古さは隠せず、テコ入れするような新たな目玉展示もなく、設備更新を先送りしているようにも察せられました。閉館は既定路線だったのでしょう。

 私鉄が昭和期までに造った沿線レジャー施設は、近年、次々と閉鎖されています。昨年には、西武鉄道系列のとしまえんや、南海電鉄系列のみさき公園が閉園となりました。鉄道沿線に施設を作って誘客するという昭和の私鉄のビジネスモデルが、もはや通用しなくなっているのでしょう。

 油壺マリンパークの閉館も、そうした時代の流れと受け止められます。となると、仮に鉄道延伸が実現して、油壺駅ができていたとしても、マリンパークはやっぱり、閉鎖されていたのかもしれません。幻の油壺駅の予定地付近は駐車場になっています。新駅を予感させるものは何もありませんが、できることなら、ここで快特電車を降りて、1キロ半を歩き、マリンパークを訪れてみたかったと思わずにはいられません。

 開館から50余年。待ち続けた鉄道は、最後の2キロが届きませんでした。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒