【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論103】若者の流出をいかに食い止めるか 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2019年1月9日

 赤字再建団体に陥った自治体のとるべき手法は限られる。税金や上下水道などの料金を上げる。ごみ処理も有料化にする。公共施設は閉鎖する。市立病院は診療所へ転じさせる。どれもこれも市民サービスの低下でしかない。

 加えて、市職員数を減員し、給料を半減させる。議員数の定員を減らし、調査費を廃止して手当も半減する。徹底した支出削減策をとり、財政の健全化を第1目標とする。これが方程式化していて、どの赤字自治体も同様の策をとるというより、他に策を持たない。

 大企業の工場があったり、発電所や空港などを自治体内に持てば、安定した税収入があって苦しむことがないにつけ、北海道夕張市のごとく炭鉱が閉鎖されたために産業消滅によって火が消えた自治体もある。人口11万から8千人台に転じてしまった夕張市、衰退の見本であろうが、人口の減少は全国の自治体の共通した問題点であろう。しかも高齢化だ。人口減少傾向は、少子化と若者の流出である。

 政府は、都内23区内の大学定員を厳格化させたばかりか、新しく大学の設置を認めず、新学部・新学科の設置を10年後まで認めない新法を作った。で、地方の大学の定員割れがやや緩和され、その効果が出た。若者を少しでも地方に留め置く策で、東京一極集中を避けようとしている。

 地方の自治体も、いかにして若者の流出を食い止めるか、呼び込むかの研究が重要である。若い世代が、この街で己の夢をかなえたい、と思うような街づくり策が求められる。

 ニューヨークでもコペンハーゲンでも、若い芸術家や工芸作家が住み、特色ある一画を構成して観光地となっている街がある。若いがゆえに苦労ができる、若いがゆえに質素な暮らしができる、そんな共通の環境下で将来の夢を追う若者たちが集い街をつくるのは文化振興の意味でも大きい。

 地方の各自治体は、空き家対策をいかに考えているのだろうか。住民の個人的問題として捉え干渉しようとはしないかに映る。人口流出によって空き家が増える。この空き家を自治体が不動産屋さんよろしく管理し、若者を呼び込む政策は考えられないだろうか。民泊法に沿って外国人旅行者を迎え入れてもいいが、特色ある若者を集めるといい。

 若者が1人増えると、年に約150万円を地元に落とすという。食費に家賃、雑費等、それに人口増による補助金の増加は大きい。なのに自治体は本気になって人口増加のための研究をせず、冒頭に記した内向き策に拘泥する。節約も重要策であろうが、志気低下と失望感を助長させるデメリットも無視できない。

 自民党の総裁選挙の折、石破茂候補は地方再生・創生の課題解決を主張された。が、具体策については言及せず、有権者を納得させることができなかった。地方自治体が、企業誘致のために税の優遇措置をとったり、自衛隊の誘致運動を展開したり努力しているが、キーワードは若者の増加策である。

 私が首長ならば、全国の芸術学部系の大学行脚を行い、芸術家を目指す卒業生を招へいする。安く家(空き家)を提供し、中小企業や農家でのアルバイト先を紹介し、住民税を免除する。画家、音楽家、芸術家、漫画家、小説家、詩人、書道家等、芸術を志す若者を集めて「芸術村」をつくる。補助金制度を設けて応援する条例もあれば、その自治体の意気込みが若者に伝わる。

 特色のある自治体をつくれば、若者が魅力を感じる自治体にすれば、若者が集まる。そのための努力を本気になって行う自治体が多くないのは、首長や住民が文化について考えないからであろう。国の状態がいかに変化しようとも、人間は人間らしい文化を衰退させることはない。この文化の利用というよりも、芸術家を育てるという気概を持つべきだ。

 若者の流出を逆手にとって、かつて大富豪や権力者が養成した芸術家を、変わって地方の自治体が養成するべきだ。そんな自治体の出現を期待する。

(日体大理事長・松浪健四郎)

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