【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 99】非日常を感じる露天 

  • 2018年12月6日

 日本人は、ちゃんとした店舗よりも、露店が好きなのかもしれない。非日常の商売は、なんとなく低廉に感じ、人々をウキウキさせる。祭礼時の神社や寺の門前に列をなす露天商は、上手に客の心理をつかむ。堅苦しい日常からの解放感、どうしても財布のヒモが緩むうえ、子どもたちが駄々をこねる。

 私が代議士時代、毎日曜日、大阪・田尻港横の朝市に出掛けた。多くの人たちが早朝より新鮮な魚介類や野菜を求めて集まる。すべて露店。私などは朝市前で演説したり、パンフレットを配布したりして、選挙活動のポイントとして利用した。遠くからの客もあり、次第に露店で売る商品数も増加、うどんや天ぷらなどの朝食店も賑々(にぎにぎ)しくあった。非日常効果と週1回という決まりが、逆に集客力を増し、名物化している感じがした。

 泉州名物の大阪湾で取れたタコにアナゴ、しらす干し等の特色ある商品が安価で売られている。近辺の農産物も人気高く、飛ぶように売れる。朝市の雰囲気が、客を元気にしてくれるばかりか、人気が人気を呼んで歩くのにも苦労する。

 織田信長や豊臣秀吉時代の城下町などの市場で行われた経済政策、楽市令を想起するが、規制が緩和されて自由な商売で活性化している印象を受ける。集う客には解放感があり、非日常を楽しむ。買物をレクリエーションに置き換えるのだ。朝市の特徴であろうか。

 日体大のすぐ近くで、年2回、2日間にわたって東京・世田谷で「ボロ市」が開催される。名だたる蚤(のみ)の市で、連日、20万人前後の人出だ。もともとは古着の売買が盛んに行われたため、明治時代にボロ市の名が付いたという。現在では、あらゆる品々が700近くの露店で売られていて、ファンが多いのに驚く。特に代官餅が人気で、ボロ市の会場しか製造、販売されず、その希少性と味の評価が高い。

 昭和10年代の最盛期には2千の露店が並んだというから歴史も古く、現在では世田谷区と東京都の無形民俗文化財に指定されている。世田谷区の名物だが、交通量が増加するにつれ、かろうじて伝統を守って名物を維持しているかに映る。道路上での市だけに現況が限界という印象を受ける。

 全国的に広場や公園を用いて、フリーマーケットが開催されているが、たいていは業者が個人の出店者を募って行うケースが多い。もし自治体が中心になって、朝市やフリーマーケットを行えば、その地域の活性化に役立つに違いない。住民は、非日常を楽しみにしているのだ。現代版の「楽市」を企画してほしいと願う。衣類や物が余り、家に置いておけない不用品を自治体が仲介者となって売る企画なんて難しくないのではないか。

 青森県八戸市の館鼻岸壁の朝市に行ったことがある。八戸市は朝市の街としても有名で、どこかで朝市が開かれている。三日町や八日町などの町名は、城下町時代の名残。近隣の農漁村から運ばれた魚介や野菜が路上で売られてきたという。市営魚菜小売市場を中心にした朝市は、月曜から土曜日に開催される。で、日曜日は館鼻岸壁朝市だ。300以上の店が800メートルにわたって商売をする迫力、毎回、2万人以上の客が訪れるという。ここでは買う楽しみもあるが、食べる楽しみも大きい。大きな声の呼び込みは、私たちに元気をプレゼントしてくれる。

 祭礼だけが非日常だった自治体。自治体が非日常の世界をつくって活性化すべきである。地域の特色を生かして知恵を絞る工夫がほしい。世田谷のボロ市は、骨董(こっとう)品、古本、植木、食料品、神棚、玩具、寝具、新品の衣類、生活雑貨という具合、何でも売られている。意外な物まであり、それを人々が楽しむ。

 既存の商売に人々は飽きているのだ。自由な取引市場を作った楽市、戦国大名には知恵があった。値札の付いた店ではなく、売主と丁々発止で渡り合う買物の醍醐味、そんな場を自治体が中心になって作るがいい。イスラム教国のバザール(市場)の商品には値札が付いていない。だから、繁盛している一面もあるのだ。

(日体大理事長・松浪健四郎)

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