【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 89】新たなタイプが広がるアンテナ店 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2018年9月27日

 私が特別顧問を務める故郷の大阪府泉佐野市が東京に事務所を開設した。情報を収集するにとどまらず、知名度を上げる役割等、その価値は高い。が、財政に苦しむ地方自治体にあって、かかる発想をもち、実現させるのは難しい。自治体の発展のために、大胆な政策で前向きに考え、行動する故郷にエールを送りたい。私には協力すべき義務があると思っている。
 都内の新橋、銀座、日本橋や戸越銀座等を散策すれば、あちこちの自治体や地方のアンテナ店が目に飛び込んでくる。個性的な店がほとんどで、一度、入ってみようかと、その誘惑に負ける。特産品、名物、これら物産店には、その地方の匂いがあり、その地に旅しているかの錯覚を覚えさせてくれる。店員の方言もいい。

 だいたい名だたる自治体で、自慢すべき産品、地酒等があり、いわゆるメジャー。集客力のあるアンテナ店はともかく、「道の駅」の発想で店舗を持てば、無名の自治体でも構えることができるのではないか。近隣の自治体がタッグを組むのもいいだろうと思う。なぜか自治体は、横断的な協力を好まない。くだらぬ競争意識が強いに加え、つまらぬプライドに拘泥するからであろうか。

 恩師の二階俊博先生が、運輸大臣・北海道開発庁長官の折、有珠山(北海道有珠郡壮瞥町・伊達市・洞爺湖町)が大噴火した。2000年3月31日に国道230号のすぐ横からマグマ水蒸気爆発、次々と火口が開き9月まで活動が続いた。JR北海道室蘭本線が不通、道央自動車道が通行止めとなり、経済面にも大影響を与え、北海道全域にその被害が及んだ。

 二階大臣は、北海道の農水産物のカタログを全国会議員に配布し、申込書を添付した。「ガンバロウ北海道」支援キャンペーンを張られ、私もジャガイモを50箱注文、知人へ贈った。その品の受取先は、銀座にある北海道のアンテナ店であった。秘書連中は、連絡を受け次第、アンテナ店に足を運ぶ。二階グループの議員たちは、率先して購入して北海道を支えようとし、大臣の期待に応えた。その折、私たちはアンテナ店の存在を知り、以後、ちょくちょく寄るようにもなった。サケの「時知らず」やホッケの大きな干物は、新鮮で美味、容易に入手できるのがうれしい。トウモロコシにアスパラ、買い物カゴがすぐに一杯になってしまう。

 報道によれば、自治体が東京都内に出すアンテナ店に、新たなタイプの店が広がっているらしい。徳島県はホテルを併設した。渋谷に出店し、物産販売とレストランに加えて64ベッドのホテルを併設。変わっているのは店名に徳島を付けず、先入観なくして店内に客を導く作戦で、地元の食材を売り、食してもらう趣向。県が2億3千万円を投入、5階建てビルを改装して今年2月に開店した。外国人観光客や地方からの若い旅行者の利用を想定して知恵をしぼったにちがいない。

 中央区にある石川県の「いしかわ百万石物語・江戸本店」も面白い。移動販売車を作り、近郊に出張してミニ物産店を始めたのだ。このアイデアも評価できる。何よりも積極性がいいうえに、観光案内の役割も担える。物産販売プラス観光案内情報、アンテナ店の必要性を痛感する。

 一般社団法人・地域活性化センターによれば、現在都内に30店を超すアンテナ店があるという。特色がなければ埋没してしまう可能性があり、ご当地グルメ、物産紹介・販売だけではファン作りに結び付かず、他のアイデアが求められる時代に入っている。自治体の知名度アップ、観光と移住に関する情報提供や相談窓口の設置等、多彩なプログラムが必要だ。空き家情報、働き口のあっせんや起業支援、地方の時代をアピールするべきであろう。

 地元へのツアーを組むなり、祭りや行事に合わせて都会人を呼び込む知恵や企画もいいだろう。そのためのプロデューサーが地方の自治体には不在だ。個性的で行動力のあるアイデアマンである役人を育成しないと、その自治体は消滅の危機を迎えることになろう。

(日体大理事長、松浪健四郎)

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