【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 87】全ての学校にクーラーを 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2018年9月13日

 今夏の殺人的な暑さには降参するしかなかった。メディアは、熱中症予防のためにはクーラーを使用しましょうと呼び掛ける。水分も適当に補給しましょうと伝えてくれる。異常気象なのか、世界的に暑い夏だった。クーラーが飛ぶように売れたのはいいが、外出時に扇子とタオルを忘れてしまうと苦労した。

 大学での講義はラクチン。エアコンが設置されていて快適。私どもが学生だった頃と大違い。大学は当然のことながら、高校でもほとんどエアコンが設置されている。今や常識化していて冬も夏も快適に勉強ができる。

 ところが、かつて私が選挙区としていた地方の方から話を耳にした。市立の小中学校にはクーラーがないという。東京や香川県の公立小中の教室には100%設置されているのに、設置されていない自治体が多くあるという。これは「クーラー格差」、暑さに負ける子どももいるだろう。昔と暑さの度合いも異なる。全ての学校は、クーラーを完備すべきだ。

 整備の進まない理由は、自治体の財布による。政府は30年度予算で287億円を交付金として支出した(学校施設環境改善交付金)。が、補助率は3割、クーラー設置よりも校舎の耐震化に回され、財政の苦しい自治体は予算の増額に加え交付金の在り方に変更がない限り、クーラー設置が難しい。

 で、政府は来年以降も猛暑が続くと考えられるゆえ、補助の見直しの検討に入った。子どもの健康を守り、授業環境を整備するのは当然だが、補助率によっては自治体のばらつきが出る可能性がある。山口県は18%、長崎県は15%、愛媛県は13%のクーラー設置率、西日本の暑さを考慮すれば、まず政府が予算を増額すべきである。猛暑対策は緊急の課題なのだ。

 今夏のごとく命の危険がある暑さでは、根性論は通用しない。災害ともいえる暑さなのに、クーラーをぜいたく品と決めつけて設置しない自治体があってはならない。自治体の役所や議場よりも優先すべきなのである。猛暑続きだった今夏、扇子とうちわと扇風機で乗り切ることができただろうか。教育環境に自治体は敏感になるべきだし、まず、子ども優先の政策を選択せねばならない。

 クーラー設置ゼロの自治体も多数あるのには驚くしかあるまい。子どもたちの安全政策よりも優先度の高い課題なんてあるのだろうか。自治体は、体育館や講堂の天井を取り除いたり、ブロック塀の撤去にも取り組まねばならず、財政負担は大変だろうが、暑さ寒さについても本気になるべきだ。

 明治時代のお雇い学者、大森貝塚を発見したエドワード・モースが書いている。「日本人は礼節に富む国民なのに、夏には裸になって外で夕涼みをする」と。キリスト教徒の目からすれば、人前で裸をさらす日本人は異様に映ったのであろう。

 そういえば、夏に来客があると、母親たちは麦茶を出しながら、「どうぞ裸になって下さい」と勧めていたことを想起した。風情を感じるが、近年の暑さは度を超しているではないか。

 野球、大相撲等の観戦に行くと、必ず広告入りのうちわをくれる。それでもうちわで太刀打ちできる暑さではなく、日中、公園や広場で遊ぶ子どもは皆無だった。

 以前、夏にパキスタンを旅した。水銀柱は40度を超えていた。道を行く人はおらず、あたかも廃墟の街。だが、日が落ちると人々は外へ繰り出し、眠っていた街が突然、蘇ったのにはビックリした。ただ、温度の高い国の湿度は低い。日本ほど汗を流し暑さを感じる国は、それほどないというのが私の体験からいえる。

 「寝ていてもうちわの動く親心」、この川柳の詠まれたのは昭和の中期である。クーラーの普及していない時代、どこの家にも風鈴の音が涼しさをもたらせてくれた時代の話。今どき窓から風を入れるなんて考えられなくなった。自治体は、「クーラーを設置する親心」を持たねばならない。来年、間違いなく学校施設環境改善交付金が増額されるのだから。

(日体大理事長、松浪健四郎)

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