【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 86】夏の暑さを吹き飛ばす花火大会 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2018年9月6日

 異常気象によるのか夏の気温の高さは全国的に殺人的であった。クーラーやアイスクリームの売り上げは伸び、ビール会社もホクホク。それにしても猛烈な熱さ、センスかウチワを持ってウロウロするしかない2018年の夏。

 納涼イベントとしては、やはり花火大会。かつて大阪のPL教団の花火大会を見て感動したことがあったが、テレビでは新潟県長岡市の花火大会が中継されていた。画面が小さいため、それほどの迫力は伝わってこないが、美しい。ナイアガラの壮大さにうっとりしつつ最後まで見てしまった。数十万人の人たちが、暑さを忘れたに違いない。この長岡の花火と共に有名な秋田の大曲の花火、一度は見たいと願っている。

 7月から8月にかけて、この国では全国で毎日4、5カ所で花火大会が開催されているという。川や海がある国なので、大観衆を容易に集めることができるに加え、夏の風物詩としては最高だ。しかも地域それぞれ伝統があり、盆踊り大会や夏祭りの中のイベントとしても花火大会が人々を喜ばせてくれる。

 とはいえ、花火大会には大変な費用が必要である。すでに集金スキームのできている地域はともかく、自治体の協力なくしては花火大会開催は難しい。警察や消防の協力も求められるから、どうしても自治体が主催者となる。費用の工面に汗だくになる自治体の役人や観光協会の人たちの苦労が目に浮かぶ。

 今年、山梨県市川三郷町ふるさと夏まつりの花火大会、「神明の花火」大会に招待された。夏の夜空を彩るスケールの大きな花火大会。武田信玄の時代からのろしを作り、その伝統からくる花火作り、市川三郷町の産業の一つでもあるらしい。

 今年は第30回大会、笛吹川の河畔で約20万人の人たちを集めて行われた。有料観覧席は超満員、チケットは発売と同時に完売するというから、その人気は絶大。

 市川三郷町が主催者である。多くの花火師が町内にいるばかりか、町民たちは花火について詳しい。プログラムの紹介の際、特大スターマイン、金麦花火、2尺玉といった花火の種類が発表されると、観客は歓声をあげたり大拍手。私などは理解できないのだが、観客は花火の知識が豊富、さすが花火生産の町でもあると感じた。

 7時から9時までの2時間、約2万発の花火が夜空に大輪の花を咲かせる。500メートルの高さまで打ち上げられ、直径が500メートルにまで広がる2尺玉、爆音もすごいが、その美しさは表現しがたい。次々に打ち上げられる超特大スターマインも私たちのド肝を抜く。カラフルで音楽を流しながらの花火、浴衣姿の女性たちや家族連れたちの歓声が地面を響かせる。

 想像していたよりも迫力があり、形や色が変化する花火もあり、文字どおり暑さを忘れさせてくれた。

 役場の担当者は、「もっと有料観覧席を作りたいのですが、これが限界です」という。

 花火は、どこからでも見られるにつけ、やはり打ち上げ場所の正面がいい。有料席を設置するとなると、改札をはじめトイレ、警備、救護、案内係を配置せねばならない。町役場総動員で花火大会を支えている印象を受けた。

 プログラムには、びっしりとスポンサー名が書かれてある。5千万円以上の費用がかかるため、多くの協賛者を募る苦労は大変であるに違いない。よくぞ、これだけ協賛企業や団体を集めたものだと感心もしたが、伝統のなせる業なのだと納得する。全国の花火師たちが、「神明の花火」こそが日本一だと主張するにふさわしい花火大会であった。

 市川三郷町の町長が先頭に立ち、郷土の産業を支えつつ広く山梨県人を巻き込んでの納涼大会。しかもグラウンドには数多くのテントによる出店エリアがあり、夏まつりの雰囲気がプンプンしていた。これだけスケールの大きな花火大会、どの自治体でも真似はできないにつけ、工夫次第では可能であろう。

 自治体にやる気さえあれば、どんなに暑い夏であっても、それを吹き飛ばすパワーが生まれることを市川三郷町で実感させられた。

(日体大理事長、松浪健四郎)

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